虎の怪物新人・佐藤輝「五輪代表サプライズ選出」のカギは交流戦の対応力

交流戦初戦は不発に終わった佐藤輝

サプライズ選出なるか。阪神のドラフト1位・佐藤輝明内野手(22)が25日のロッテ戦に交流戦初見参した。「6番・右翼」で4打席で交流戦初安打はお預けとなったが25日現在、日本人チームトップの10本塁打、新人ながら内外野を守れる猛虎の新人には五輪代表入りの可能性もまだ残っており、交流戦は最後のアピールタイムともなる。

初の交流戦で初日から快音とはならなかった。多くのパの投手が今年の交流戦で「対戦したい打者」に挙げた佐藤輝は、4打数無安打の交流戦の船出に。開幕直後は打率1割台に低迷も、その後の軌道修正で今や打点32はリーグ2位、同3位の得点圏打率3割2分6厘と確実に成長の軌跡を描いている。それだけに交流戦でもこれまでの同一リーグとの対戦同様、素早い対応が求められることになりそうだ。

さらには交流戦での「対応力」次第では、今夏の五輪選出の行方にも影響する可能性もまだありそうだ。仮にも佐藤輝が選ばれればまさに〝サプライズ選出〟となるが、来月上旬には通称・侍ジャパン「野球日本代表」の最終候補メンバー24人が決定する。

3月の一次候補には佐藤輝も名を連ねており、雨天中止となった4月12日の広島戦に稲葉篤紀監督(48)が視察に訪れた際には「非常に魅力を持った選手」と今後に期待を寄せ、選出に含みを持たせていた。そんな「もしかしたら…」の可能性も広がってきた感もある。

故障で24日まで抹消中だった大山に代わり、5月は三塁で11試合に出場。大学時代の本職だったポジションで無失策とそれまでの右翼手だけなく、内野手でのポテンシャルを披露。五輪は通常の公式戦よりも少ない24人のメンバー構成で、野手は複数ポジションを守れることが必須要素でもあっただけに、所属チームの戦術に適応していくなかで〝クリア〟したことにもなった。

左の長距離打者としてはヤクルト・村上、ソフトバンク・柳田、オリックス・吉田正などの有力候補の面々よりは確かに経験値で劣る。その事実は否めずとも、バットでのさらなる〝追い込み〟は稲葉監督も期待を寄せるところ。侍関係者によると、稲葉監督もまた「打者・佐藤輝」に見入られたひとりだという。

3月16日のヤクルトとのオープン戦。カウント3ボールで同じ年の寺島から神宮球場右翼席上段へ放った本塁打がそれだ。140キロの内角高め直球を叩いたもので、投手がストライクを〝とりに来た〟1球をミスショットすることなく、一振りでしとめた勝負強さと内角高めの直球を、スタンド上段へ運ぶパワーに思わず唸ったという。

侍指揮官が惚れ込んだのは、新人とは思えぬ度胸の良さ。稲葉監督も北京五輪で一発勝負を経験。その経験をもとに「短期決戦ではどうしても気持ちも『大事に』とか、技術も〝守り〟に入りがちになるけど、それでは勝ちきれない」と〝攻め〟のマインドを持つ重要性を口にしており、佐藤輝の超・積極打法は確実にプラスの印象としてインプットされたという。

そもそも世界的なコロナ禍がなければ五輪は本来であれば昨年終了しており、佐藤輝は昨年であれば母校・近大4年としてトップではなく「大学代表」の対象選手。1年遅れた故に佐藤輝に訪れた地元五輪出場の千載一遇のチャンス。その願いが叶うか否かは文字通り交流戦での暴れ方が鍵を握りそうだ。

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