野菜とコロナ

 この時季を晴れやかに詠んでいる。本紙の情報面にかつて、長崎市の男性の一句が載った。〈五月晴れ新じゃが掘りの今盛り〉。晴天の下のジャガイモ掘りにふさわしい頃だが、梅雨入りが早かったこの5月の空はどんよりしている▲その旬の物はこのところ、値段がぐんと上がっている。農林水産省の先週の調べによると、ジャガイモの小売価格は平年よりも4割高かったという▲買い置きができる。使い道がいろいろある。外での飲食が減っている昨今、家庭での調理と相性のいいジャガイモは人気があるらしく、おおむね高値が続いている。ニンジン、ネギ、トマトは平年とそう変わらない▲葉物(はもの)のレタスは2割以上、キャベツは4割ほど、平年よりも安くなった。全国あちこちで飲食店に休業、営業時短が求められ、店の需要が落ちているのが、その理由の一つだろう▲高値といい安値といい、今なお終わりが見えない新型コロナの拡大が、野菜の価格を動かしているらしい。大雨、長雨、少雨と、天候の影響は多々あるにしても、それ以外で値段が左右されるのは、まれなことに違いない▲今年はどうやら長梅雨になるとみられる。日照時間が足りないと、生育不足で野菜の値段はやがて上がるものだが、さてどうなるか…。この梅雨は、案じる時間もまた長い。(徹)

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