お代わり自由

 人間には物事に慣れたり飽きたりする性質があって、物事の効果や満足度は事柄が反復するたびに必ず少しずつ低下していく-と教えるのは経済学の「限界効用逓減の法則」だ。学生時代にファミレスで友人から教わった▲「2杯目のコーヒーは1杯目より満足度が小さいだろ。それのこと」-40年近くたっても、いまだに記憶が鮮明なのは「お代わり自由」のコーヒーで延々と粘りながら…というその時の状況が、つくづく“説得力満点”だったからだろう▲こちらは「慣れた」「飽きた」の典型例になってはいないか、効き目が薄れてはいないか、と考えずにいられない。新型コロナ対策で東京や大阪など9都道府県に発令中の緊急事態宣言の期限が6月20日まで延長される見通しになった▲最初の期限がいつまでだったか、何回目の延長だったか、何だか既に記憶は怪しい。「緊急」が常態化してしまったら、標語以上の効果は望めない▲期限が延びても対策に変化が見られないことや、宣言を解除するための指標が明示されないことへの批判も強い。宣言の延長が事態を好転させるのか、皆が首をかしげている▲難しい注文をしているつもりはない。政治の本気を言葉と施策で示す時だ。無策のままの「お代わり」は意味がない…多くに共通する思いだろう。(智)

© 株式会社長崎新聞社