<社説>わいせつ教員対策法 性暴力根絶の一歩とせよ

 わいせつ行為で懲戒免職となった教員の免許取得を、都道府県教委が拒絶できる新法が28日に成立した。 当事者、保護者をはじめとする世論の高まりが立法化を後押しした。優越的な立場を悪用した教員のわいせつ行為は許されず、子どもの性被害を防ぐ上で前進した。

 一方で新法は学校に防止や早期発見、調査などの対応を求めた。被害者の心に深い傷を残す性暴力はあってはならないものだ。新法成立を性暴力根絶への第一歩としたい。

 焦点だった免職者の免許再取得は、都道府県教委が拒絶権を持つことで、わいせつ教員が再び教壇に立つことのないよう歯止めをかけた。

 憲法が保障する職業選択の自由を制限する内容だが、子どもたちの人権を守るためには必要最小限の規制だ。

 免許再取得に当たっては更生状況などが適当と認められる場合に限定した。同時に第三者による審査会を設けることで公平性を担保している。

 新法の背景にあるのは、教員による不祥事の多さだ。文部科学省によると、2019年度にわいせつ行為やセクハラで懲戒処分や訓告を受けた公立小中高の教員は過去2番目に多い273人だった。

 県内では、13年に当時中学3年生の女子生徒が40代男性教諭からわいせつ行為を受け、後に自殺した。

 琉大大学院の村末勇介准教授によると、学校では犯罪が起こらないという「心理的死角」、教室など2人きりになる密室がある「構造的死角」があり、性暴力が起きる温床となっている。

 子どもの人権を守るという当たり前のことを教員に徹底する必要がある。現状、教員による性暴力がなくならないのであれば、それらの教員を教育現場から退けるのは子どもたちや保護者にとって自衛の手段である。

 施行後に重要となるのは防止策への取り組みだろう。

 新法は教員のわいせつ行為などを「児童生徒性暴力」と定義し、同意の有無にかかわらず禁止した。服の上から体に触ることや性的な言動も含めている。文科省は防止策をまとめた「基本指針」を策定することになっており、現場への周知が必要だ。

 併せて被害者の人権に配慮して医療、福祉、法律の専門家も協力した調査が教委に求められている。

 特に被害者への配慮が重要だ。90年代に中学教諭から性暴力を受けた札幌市の女性は「教諭は生徒を導く絶対的な存在と思っていた」と当時を振り返る。自身が性暴力の被害者だと理解するまで30年近い歳月を必要としたという。

 相手が教員であろうと嫌なことにすぐ声を上げられるようにするには、子どもたちへの人権教育、被害を訴える場の確保が必要だ。ましてや教員への信頼を悪用し、被害者が自身を責めることがあってはならない。教委や学校に課された課題は重い。

© 株式会社琉球新報社