溶岩ドーム 今も大規模崩壊の恐れ 「浸食谷」も不安要因

雲仙・普賢岳大火砕流30年 

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雲仙・普賢岳の溶岩ドームに向かって炭酸谷、極楽谷のガリーが延びている=昨年10月(雲仙砂防管理センター提供の写真を加工)

 長崎県の雲仙・普賢岳噴火災害で、消防団員や警察官、報道関係者ら43人の犠牲者を出した1991年6月3日の大火砕流惨事から、間もなく30年。噴火活動で形成された溶岩ドーム(平成新山)は、直下型地震などに起因する大規模崩壊の危険性が指摘されている。加えて、山体は長年の雨水による浸食谷「ガリー」が山頂に向かって延びてきており、溶岩ドームの「足元」は不安定さを増しているという。

 難しい調査

 現在、火山活動は静穏な状態。だが、国土交通省長崎河川国道事務所の砂防課「雲仙砂防管理センター」(同市)の担当者は懸念を示す。「溶岩ドーム内部の構造は調査が難しく、今も分かっていない。(ガリーが溶岩ドーム下部に到達した場合)不安定さを増す要因になりかねない」
 溶岩ドームは約1億立方メートルで、ペイペイドーム(福岡市)約53杯分に当たる。普賢岳の地山との間に火山灰などの噴火堆積物があるため脆弱(ぜいじゃく)で安定せず、1年間に約6センチのペースで東南東(島原市側)へ沈降。97年の観測開始から24年間で、同市側にずり下がるように約1.37メートル移動し、地震や豪雨による大規模崩壊の可能性が残る。

 2.2キロに成長

 山腹の斜面には約1億7千万立方メートルに及ぶ火山堆積物があり、ガリーの発達も続く。同センターによると最も発達している極楽谷と炭酸谷の二つのガリーは、それぞれ長さが推定約2.2キロまで成長。幅、深さを拡大させながら溶岩ドーム直下まで延び続けている。
 2019年11月から20年12月までの約1年間で、炭酸谷に限っても約1万2千立方メートルの土砂移動が発生した。晴天による斜面の乾燥でも浸食は進み、降雨時にはガリーで崩落した岩屑(がんせつ)などが土石流となる。近年では16年6月、水無川支流の赤松谷川で約6万5千立方メートルの土砂が砂防施設に流入した。
 国は土石流や溶岩ドーム崩壊に備え、93年から砂防ダムなどの建設工事を進め、2020年度の事業完了までに水無川、中尾川、湯江川に計95基の砂防施設を建造した。ただし溶岩ドームが大規模崩壊した場合、島原、南島原両市の一部に岩屑雪崩が押し寄せる可能性が高いと考えられている。両市の試算では、水無川沿いの島原市の安中地区で2843世帯のうち約6割が、南島原市深江町で約2960世帯のうち約420世帯が、それぞれ崩壊の影響を受ける。

 地域と連携

 ハード対策に加え、ソフト対策も重要とみられ、島原市市民安全課の中川正秀課長(54)は「地域と連携した防災システムづくりが求められる」と強調する。
 溶岩ドーム東側を中心に、島原、雲仙、南島原3市にまたがる約950ヘクタールは今も警戒区域。島原半島直下には雲仙活断層群があり、マグニチュード(M)7クラスの直下型地震が起こる可能性も指摘されている。
 九州大地震火山観測研究センター(島原市)の清水洋特任教授(64)は「火山の状態が静かでも警戒区域が解除されないのは、地震や大雨などで不安定な溶岩ドームが崩壊する恐れがあるためだ」と注意喚起する。