「被災協・被爆二世の会・長崎」会長退任 佐藤直子さん 流れできた【インタビュー】

被爆体験の継承や被爆2世援護を求める活動に奔走した9年間を振り返り、「共に活動する2世を増やしたい」と語る佐藤会長=長崎市岡町、長崎原爆被災者協議会

 2012年から「長崎被災協・被爆二世の会・長崎」の活動を引っ張ってきた佐藤直子会長(57)=長崎市=が、今月末で退任する。平和運動の経験や知識が少ない中で会長に就き、戸惑いながらも被爆体験の継承や被爆2世援護の拡充を求める活動に奔走。9年間の歩みを振り返ってもらい、今後の課題を尋ねた。

 -会長就任の経緯は。
 被爆者の高齢化や減少を危惧した長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)が、活動を引き継いでもらおうと被爆2世に設立を呼び掛けた。私も被爆者の父(池田早苗さん・享年86歳)に誘われ、11年から準備段階の集いに参加した。父が被災協理事だったため会長就任を頼まれたが、原爆に関する知識もほとんどなく不安だらけ。それでも他の2世にも支えられ会長になった。会の活動以外にも、被爆体験記の朗読ボランティアや、父の体験を語る「家族証言者」活動を始めた。

 -9年間の取り組みは。
 最大の目的は核廃絶や平和運動の継承。その中で、被災協が開くイベントの準備や運営、記念誌発行に向けた聞き取りや編集などを2世も担い、被爆者と一緒に活動する流れができた。2世の健康不安を解消するため、健康実態調査の実施や健康診断へのがん検診追加などを国に求める活動も重要だ。
 父が原爆死没者の慰霊のため浦上川沿いで始めた花植え活動は、14年に被災協と共同で引き継いだ。平和公園そばの被災協事務所では毎年夏に写真パネル展を開催。被爆講話を聞いたり碑巡りをしたりする勉強会も開いてきた。

 -2世が直面する問題は。
 中高年の2世も増え、健康不安は増している。突然がんが見つかれば、やはり放射能の影響を考えてしまう。東京都や川崎市などには2世への医療費助成制度があるが、県内にはない。同じ被爆2世なのに、支援に差があるのはおかしい。
 国は、私たちが被爆2世であると証明する手帳などを発行していない。2世への(医療費助成などの)法的援護はない上、親が亡くなり被爆者健康手帳を返納してしまうと、自身が2世だと証明することすら難しくなる。一方、親が被爆したことや自身の健康問題に関心のない2世も増えている。

 -会の課題と今後は。
 会員は減っている。2世の年代は幅広く、親の介護が始まったり、自身が終活に入ったり、仕事や子育てが忙しかったりとさまざまで、会を辞める人や亡くなる人もいる。活動が一部の人に偏り負担が増えているのが現状。2世援護や不安解消を進めるため、会の活動を多くの人に知ってもらい、一緒に声を上げる2世を増やしたい。
 被爆者の語り部は少なくなっていて、会員の2世にも「家族証言者」として語り部活動をするよう勧めている。子育てが一段落した人などには「やってみない?」と声を掛けてきた。今まで、親の被爆体験を直接聞いたことがないという2世は多い。親が存命の人は今のうちに聞き取り、証言者になってほしいと願っている。

© 株式会社長崎新聞社