巨人戦の連勝が14で止まったソフトバンク 9回の選手起用は“最善策”だったか?

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

必死の継投策を繰り出す巨人と早めに仕掛けたソフトバンクとの接戦

■巨人 4ー3 ソフトバンク(30日・PayPayドーム)

ソフトバンクは30日、本拠地・PayPayドームで行われた巨人との交流戦に3-4で競り負けた。巨人を上回る12安打を放ったものの、打線の繋がりに欠けて反撃及ばず。2019年から続いていた巨人戦の連勝は14でストップした。

両チームの意地がぶつかり合う接戦だった。巨人は必死の継投策でリードを守ろうとし、ソフトバンクも早めの仕掛けで追いつこうとした。結果は惜敗。試合後の工藤公康監督は「ジャイアンツさんも負け続けているわけにはいかないでしょうし、必死にきている。こっちも必死にやっていますけど、勝負なんで勝つ時も負ける時もあります」と淡々としたものだった。

ソフトバンクは先発の和田が初回に2点の先制点を献上。2回に松田、牧原大の適時打で追いついたが、5回に左腕が岡本に勝ち越しソロを被弾。1点を追う展開で、勝負の後半戦を迎えることになった。

6回、先頭の甲斐、続く松田の連打、今宮の犠打で1死二、三塁のチャンスを作った。巨人ベンチは2番手の鍵谷から変則左腕の大江にスイッチ。ここで工藤公康監督は牧原大に替えて、“左キラー”の川島を代打で起用した。ここまで牧原大は2安打を放っており好調だったが、左の大江ということでの代打だったが、結果は二飛に倒れた。

6回の牧原大に代打・川島は「あそこで勝負をかけて、どうなるかが大事」

この代打策の意図を指揮官は「あそこは追いつかないといけないところだったので、早めに勝負しにいってというところだった。後ろにいけば、ジャイアンツもいい投手が出てくる。あそこで勝負をかけて、どうなるかが大事。結果は打てる時もあれば、打てない時もある」と明かす。巨人の勝ちパターンが出てくる前に、早い段階で追いついておきたいとの思いからの“勝負手”だった。

ここから巨人も決死の継投策を繰り出した。7回を高梨、ビエイラで切り抜けると、8回はセットアッパーの中川が登板。1安打を許したものの、無失点に凌ぐと、なんと9回も中川が回跨ぎでマウンドへ上がったのだ。ソフトバンク打線が中村晃、栗原、柳田、長谷川、ビハインドながらバレンティンに替えて途中出場していた上林と左打者が5人並ぶことから、異例の2イニング起用に打って出たのだった。

この9回、ソフトバンクは先頭の中村晃が内野安打で出塁。ここでベンチは代走に真砂を起用。その後、栗原は遊ゴロに倒れ、柳田が死球、長谷川の中前適時打で1点を返した。なおも1死一、二塁のチャンスで途中出場の上林に打順が回ると、ベンチは代打に明石を送った。結果は空振り三振。続く甲斐は代わったデラロサの前に見逃し三振に倒れ、ゲームセットとなった。

9回に中村晃の代走に真砂を起用したことで、ベンチから右の代打が…

この9回の攻防で惜しむらくは、9回の先頭で中村晃の代走に真砂を送ったことか。左が5人並ぶ攻撃。巨人ベンチは右打者を迎えるまで中川を引っ張るつもりだっただろう。となると、ベンチに右の代打を残しておきたかったところだが、選択肢は捕手の海野しか残っていなかった。代走には周東ないし、同点の走者のために周東を残しておきたかったのであれば、高田という選択肢もあっただろう。

明石は長谷川、川島と並ぶソフトバンクの代打の切り札の1人でベンチの信頼は厚い。「右は海野くんしかいない。明石くんが左を苦にするわけではない」と工藤監督は語っていた。だが、今季は右投手に対して35打数8安打、打率.229である一方、左投手とは2打席しか対戦しておらず、1打数0安打の打率.000。牧原大に川島を送っているように、右対左、左対右の対戦を大事にする工藤監督であれば、どうせなら右投手に対して打席に立たせたかったはずだ。

となれば、真砂を代打要員として残し、上林のところで代打・真砂を送る。巨人ベンチがデラロサにスイッチしたならば、ここで代打の代打で明石を投入。あくまでも結果論、粗探しにはなってしまうが、これがベンチとしての“最善策”だったのではないだろうか。

たとえ、このように起用したところで、9回に逆転できていたかどうかは誰も分からない。この3連戦は2勝1敗とソフトバンクが目指す勝ち越しを掴み、指揮官も「勝つときもあれば、負けるときもある」と淡々としたものだった。“たられば”だが、あの場面で「代打・真砂」の選択肢が残っていれば……と感じざるをえない敗戦だった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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