原巨人〝異例の早期G投フル回転〟の背景に猛虎への危機感

デラロサを迎える原監督。リリーフ陣は連日の大忙しだ

G投は厳しい試練を乗り越えられるのか。巨人は1日の西武戦(東京ドーム)で9回に3点差を追いつかれ、4―4の引き分けに終わった。リリーフ陣は連日の大忙しとなったが、ここへきてコマ不足に陥った先発陣も登板間隔を詰めてフル回転。原辰徳監督(62)による異例とも言える〝早期ムチ入れ〟の背景と思惑とは――。

痛恨のドロー劇だ。8回まで6投手をつぎ込んで西武打線を1点で抑えてきたが、9回から登板した守護神のデラロサが大誤算。代打・メヒアに2ラン、森には同点となる7号ソロを浴び、最後の攻撃でも勝ち越すことはできなかった。

この日は主砲の岡本和に球団史上7人目、最速となる24歳10か月での〝4番100号〟も飛び出した。4番打者の大先輩でもある原監督は「もう俺なんかの比じゃない。はるかに和真の方が素晴らしい4番打者だと思いますよ。王さん、長嶋さんの記録を抜く可能性をウンと持っている人だと思いますよ」と笑みをたたえたが、9回のドタバタ劇もあってか(?)記念球に記したメッセージは「何て書いたかな…。忘れた」と記憶から消えてしまったようだ。

頼れる主砲がアーチを量産する一方で、不安をぬぐえないのが先発投手陣だ。この日は開幕ローテーションを唯一守り続けている左腕の高橋優貴投手(24)が、左脚の違和感を訴えて4回途中無失点で降板。その理由を指揮官は「あまり無理はさせたくないなというところ」と説明した。

G投は菅野が5月上旬に右ヒジを痛めて離脱して以来、苦しい戦いを強いられている。高橋は今季初の中5日での先発で、2日は高卒3年目左腕の横川が先発としてはプロ初となる中5日で登板する。前戦5月31日のソフトバンク戦(ペイペイ)に先発した戸郷は5月としては異例の中4日だった。シーズン終盤さながらの〝ムチ入れ〟はなぜ行われているのか。

ライバル球団のスタッフは「お得意様としてきた阪神の勢いが衰えない〝焦り〟が大きいのではないか」と分析した。確かに、かねて球団内でも「阪神が全然落ちてこない。これ以上、離されると追いつくのがなかなか難しくなってくる」と猛虎の快進撃への危機感は強まっていた。

この日は阪神が敗れたため、4ゲーム差に縮まったものの、巨人も菅野や坂本ら主力の故障もあり、波に乗り切れない現状がある。となれば、首脳陣としては実力や好調な投手から優先的に起用する必要性に迫られるというわけだ。

また、前半戦は7月14日までで、今季はその後のオールスターに加えて東京五輪開催による中断期間(7月19日~8月12日)が予定されている。約1か月間は公式戦が行われないため「ひとまず前半戦を総動員で突っ走る算段なのではないか」(前出スタッフ)とも付け加えた。

高橋の状態について、宮本投手チーフコーチは「『痛みもない』と言うので問題はないと思う。明日の様子を見てでしょうね」とした。限られた戦力で〝鬼門〟の交流戦を勝ち抜き、阪神との差も広げられたくない巨人。試練の時はまだ続きそうだ。

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