ハイレベルすぎるセ新人王争い 佐藤輝、栗林にも劣らぬDeNA牧の武器とは

DeNA・牧秀悟【写真:荒川祐史】

8回に殊勲の逆転2点二塁打「本当は入ったかと…」“確信ジョグ”もフェンス直撃

■DeNA 4ー3 ソフトバンク(1日・横浜)

DeNAのドラフト2位ルーキー・牧秀悟内野手は1日、本拠地・横浜スタジアムで行われたソフトバンク戦に「7番・二塁」で出場し、8回に決勝の逆転2点二塁打を放つなど、プロ初の4安打(4打数)。チームは4-3で勝利を収めた。阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手、広島1位で開幕から19試合連続無失点中の栗林良吏投手らとのハイレベルな新人王争いは予断を許さない。

ちょっぴり恥ずかしかった。1点を追う8回1死満塁。カウント2-1からソフトバンク3番手・松本の149キロ速球を捉えた瞬間、逆転満塁本塁打を確信して、左手に持ったバットを掲げながら“ジョギング”。ところが打球は中堅フェンスを直撃し、あわてて二塁に駆け込んだ。とはいえ値千金の逆転打であることに変わりはない。歓喜の一塁側ベンチへ、両手を挙げて応えた。

「本当は(スタンドに)入ったかなと……」と照れ笑いを浮かべたヒーローは、「楽天戦では無死満塁で打てなかったので、それを思い出して、犠牲フライでもいいという軽い気持ちで打席に入りました」と明かした。

5月29日の楽天戦(楽天生命パーク)では、1-1の9回無死満塁という絶好機で、相手の守護神・松井に対し4球ファウルで粘った後、カウント2-2から9球目の149キロ速球を空振り三振。後続も倒れ、チームは勝ち切れず引き分けに終わっていた。「あの時は変な力みがあり、冷静でない自分がいた」という反省を生かし、この日の打席ではセルフコントロールを心掛けた。日頃から三浦大輔監督が高く評価する牧の「対応力」の成せる業だろう。

三浦監督は試合後、「相手にマークされても、コースに逆らわない自分の打撃を貫き、ここぞという場面で結果を出す。本当に頼もしい選手です」と絶賛。その声は試合中に絶叫したせいか、かすれ気味だった。

鷹先発・武田に対しては先制の中前適時打など3安打をマーク

新人離れした対応力を発揮したのは、殊勲打の場面だけではない。2回1死一、二塁では中前へ先制適時打。カウント0-1からソフトバンク先発・武田の得意のカーブを空振りしたが、直後の3球目に、続けて来たカーブを見事に捉えた。

「なかなか打てるものではないですが、試合前に映像を見ていて、前の1球も頭に残っていたので、うまく修正できました」とうなずいた。5回にも中前打、7回には右中間フェンス直撃の二塁打を放ち、好投手の武田を攻略した。

開幕直後は打撃3部門全てでリーグ上位に顔を出す活躍ぶりだった牧だが、さすがにマークがキツくなり、5月中旬には打率2割6分台まで下降した。慣れない連戦、移動で疲労も見え始めた。打順は開幕から17試合は3番、その後16試合で5番を務めたが、5月16日の広島戦以降は下位の7番が定位置となっている。

それでも「大学時代はそれほど睡眠時間を意識していませんでしたが、最近は8時間しっかり取るようにして、その日の結果を翌日に持ち越さないようにしています」とここでも対応力を発揮。成績も打率.293、9本塁打31打点(1日現在)と再び上昇しつつある。阪神・佐藤輝の.262、13本塁打38打点(同)に、勝るとも劣らない。ルーキー大豊作の今季、栗林らを含めたセ・リーグ新人王争いは最後まで熾烈を極めそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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