外国人バー悲鳴 米海軍佐世保が立ち入り禁止 コロナ禍で静まり返る街

客がいない「Brooklyn Beach」の店内。コロナ前は米兵たちでにぎわっていた=5月25日午後7時、佐世保市栄町

 一体いつになったら、米兵たちが飲みに来られるようになるのか-。新型コロナウイルス禍が続く中、長崎県佐世保市中心部の「外国人バー街」から悲鳴が上がっている。米海軍佐世保基地が米兵たちにバーへの立ち入りを禁止してから1年以上。売り上げが減少して閉店する店が相次ぎ、営業を続ける店も資金繰りに苦しんでいる。
 先月25日午後7時ごろ、同市栄町の外国人バー「Brooklyn Beach(ブルックリンビーチ)」。酒が並ぶカウンターに客の姿はない。「コロナ前は、6時ごろには外国人でにぎやかだったんですけどね」。オーナーの久冨直樹さん(39)は力なく言った。
 米軍基地に近い三ケ町アーケード周辺には、米兵が多く訪れるバーが30~40店立ち並ぶ。外国人バー街と呼ばれ、観光客にも人気のエリアだ。コロナ以前は、米国人の楽しそうな笑い声が店外まで聞こえるのが「日常」だった。しかし基地は昨年3月ごろから、米兵に対して基地外のバーなどへの入店を禁止。それ以降、街は静まり返った。
 久冨さんは外国人バー2店舗を含む3店舗を経営。ブルックリンビーチは客の7割が外国人だ。コロナ禍で毎月の売り上げは5分の1程度に減少。昼間の営業やハンバーガーなどのテークアウトを始めたが、それほど収益にはつながっていない。もう一つのバーは昨年3月から休業し、毎月約12万円の家賃を払い続けている。
 外国人バーが苦境に立たされたことは過去にもある。在日米軍人の不祥事を受け、米兵に対して禁酒令が発令された時だ。久冨さんの店も売り上げが減ったが、徐々に制限が緩和されて影響は限定的だった。今回のように、1年以上も米兵が全く来ない事態は初めてだ。
 久冨さんが知る限り、コロナ禍で10店近くが閉店に追い込まれた。「この状況がまだ続くようなら、うちも店を閉めるしかないんじゃないか」。最近、そんなことを考えている。
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 別の外国人バーで店長を務める男性(41)は昨年3月下旬に店を任された。10年以上公務員として働いていたが、40歳になり「自分の力を試してみたい」と思い切って挑戦した。
 当時は全国で感染者が増え始めていたころ。影響があることは覚悟していたが、想像以上だった。平日の客は2、3人で、週末でも10人程度。「第4波」でさらに減り、同業者が飲みに来てくれなければ「ゼロ」の日も少なくない。「お店に立ちたくない」。精神的に不安定になり、眠れない日々が続いている。
 1周年できっぱり辞めようとも思ったが「自分で決めた道だから、やれるところまでやろう」と思い直した。5月初め、リモートで接客する店をまとめたインターネットサイトに登録し、「オンライン営業」を開始。これまでに5人が“来店”した。今は客や知人に連絡し、積極的にオンラインに誘っているという。
 取材が終わりかけた午後8時すぎ、がらんとした店内に、この日初めての客が入ってきた。「今やれることを、やるしかないですね」。男性はほほ笑み、席を立った。


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