DeNAプロ4年目右腕中川は救世主になるか? 153キロに多彩な変化球は“大化け”の予感

DeNA・中川虎大【写真:荒川祐史】

名門箕島“最後”のプロ野球選手・中川虎大

■DeNA 1ー1 ソフトバンク(2日・横浜)

DeNAの手薄な先発ローテに、待望の新星が現れた。育成出身でプロ4年目・21歳の右腕、中川虎大(こお)投手だ。2日に本拠地・横浜スタジアムでのソフトバンク戦に先発し6回4安打1失点の快投。試合は1-1の引き分けに終わり、プロ初勝利こそならなかったが、次回以降に期待を持たせるのに十分な内容だった。セ・リーグ最下位に低迷するチームも、交流戦に限ると4勝2敗2分の好調ぶりで、中日に次ぐ12球団中単独2位の座をキープした。

“大化け”を予感させる投げっぷりだった。150キロ超の速球を軸に、スライダー、フォーク、ナックルカーブまでを駆使。責任回数の5回を投げ終えた時点で許したヒットは、柳田の飛球を左翼・佐野が薄暮の中で見失った1本のみ。その他は2四球無失点に封じていた。

そして1点リードで迎えた6回、1死一、三塁のピンチで球界随一の強打者・柳田を迎えても、気後れはしない。カウント1-1から真ん中高めの149キロ速球で押し込み遊ゴロ。併殺崩れの間に同点とされ、さらにこの回、柳田の二盗をきっかけに2死満塁と追い込まれたが、ここでも甲斐を153キロのストレートで右飛に仕留めた。

三浦大輔監督は試合後、「最初から最後まで、思い切って攻めていた。打たれたどうしよう……でなく、抑えてやろうという気持ちが強かった」と目を細め、「本人も手応えを感じているだろうし、大きな物をつかんだと思う。1点取られた後、ガタガタといかずに踏ん張れたことは、チームにとっても中川にとっても財産になる」とうなずいた。

母親が敵将ソフトバンク・工藤公康監督のファンであることが名前の由来

過去、中川の自己最多投球回数は4イニング、最多投球数は85止まりだったが、この日一気に6回90球まで伸ばした。本人は「先のイニングを考えず、ひとりひとり全力でアウトを積み重ねていくことを意識して投げました。ストレートに力が伝わっていたので、打者に向かって行けました」と語った。

先発は5月7日・阪神戦(4回2失点)以来約1か月ぶり。その間リリーフ陣に組み込まれ、同26日のオリックス戦では、2回途中から3回2/3のロングリリーフをこなしたが、9安打7失点(5自責点)を喫していた。先発としてワンチャンスを生かした格好だ。

「虎大(こお)」の名前は、母親がこの日の敵将、ソフトバンク・工藤公康監督のファンで、「公」と「康」がいずれも「こう」と読めることから命名。阪神ファンの父親が「虎」の漢字を当てたが、「う」に適切な漢字が見当たらず、読みを「お」としたという。

和歌山・箕島高出身。1979年に史上3校目の甲子園春夏連覇を達成した名門校OBとして、現状では最後のプロ野球選手である。2017年育成1位でDeNA入りし、一昨年7月に支配下登録を勝ち取った。

開幕直後は敗戦を繰り返していたDeNAだが、打線が徐々に調子を上げ、投手陣もリリーフ陣はエスコバー、山崎、三嶋の“勝利の方程式”が安定。浮上へ向けて残る課題は、先発ローテ要員に尽きる。それだけに、最強の鷹打線を封じ込んだ中川の快投はチームにとって希望の光だ。中川自身にとっては、誕生時に続いて「工藤公康」がもう1度人生のエポックとなるのかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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