古巣相手に奮起! 巨人・炭谷“2番手捕手”の「PRIDE」

サンチェス(右)を好リードした炭谷(左)

扇の要は譲れない。巨人・炭谷銀仁朗捕手(33)が3日の西武戦(東京ドーム)で古巣相手に攻守で奮起した。自身のFA移籍時に人的補償となった内海哲也投手(39)に粋な演出を見せ、打っては1号2ラン、守っても5投手を8回2失点に導いた。プロ16年目捕手の活躍の裏には、どんな形でもチームに貢献したいという日頃の思いがあった。

背番号27同士による運命の対戦は1―0の2回無死一塁で訪れた。炭谷が打席に入る際、場内に流れた出囃子は相手先発・内海が巨人時代に使っていた格闘技「PRIDE」のテーマ曲。G党がどよめく中、炭谷は内海の初球137キロの高めツーシームを一閃。1号2ランを右翼席に運んだ。

登場曲選びには炭谷の素直な気持ちが込められていた。「僕が(2018年オフに)FAで来た時に人的(補償)という形で西武に行って…。僕自身、いろいろな思いがあった。内海さんが(移籍後)東京ドームで初先発なので、登場曲を1打席目だけ使わせてくださいと(球団に)かけさせてもらった」。内海にもナイショのサプライズだったという。

ベテラン捕手はリードでも魅せた。中4日の先発サンチェスを6回途中1失点にまとめると、8回まで計5投手で2失点にしのいだ。試合は2点リードの9回にマスクを託された2か月ぶり一軍出場の小林と3連投だった畠のバッテリーがつかまり4―4で引き分け。巨人の1勝2分けで3連戦を終えたが、ベテラン捕手の躍動には原監督も「いいですね、非常に」とうなずいた。

今年が3年契約最終年の炭谷は、打撃面で勝る大城に今季も正捕手の座を譲っている。ここまでの先発マスクは大城の39試合に対し、炭谷はこの日が16試合目。昨季のソフトバンクとの日本シリーズでは炭谷の先発マスクはゼロ。2―13と大敗した第2戦での途中出場のみだった。

巨人での出場機会は19年が58試合、20年は56試合と2番手捕手の立場だが「全試合、スタメン出場のつもりで準備している。無理と思った時点で選手の資格はない」と人一倍のこだわりを持っている。選手の中でも一、二を争う早い時間に球場入りし、データ分析に時間をかけるのもその一環だ。ベンチスタートでも早出練習には皆勤。若手外野手へのノックや、打撃投手を務めるなど数字に表れないところでもチームに貢献している。ブルペンの癒しとなるアメの補充も炭谷が自腹で行っていることだ。

調子の上がらなかった打撃も「特別なものありますし、燃えるものあります」という古巣との対戦で2戦3安打と気を吐いた。プロ野球選手会会長としてグラウンド外でもリーダーシップを発揮する炭谷の「いぶし銀」の力はリーグV3に欠かせない。

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