【マーティ&風男塾 昭和ソングって素敵じゃん】沢田研二が80年代の音楽シーンを切り開いた

マーティ・フリードマンと風男塾の紅竜真咲(左)、桜司爽太郎

昭和生まれのアラフォー~アラ還が懐かしむ日本の歌手や楽曲を、平成生まれ世代や外国生まれのミュージシャンはどう聴くのか? マーティ・フリードマンと風男塾の紅竜真咲、桜司爽太郎が日本の懐メロの魅力を分析します。今回からのテーマは沢田研二。お題は1980年代の幕開けと同時に発売された名曲「TOKIO」です。曲を聴きながら読んでみてください。 (隔週連載)

【沢田研二論①】

――今回は紅竜さんが名前を挙げた沢田研二です。まずは大ヒット曲「TOKIO」を聴いてみましょう

紅竜:この曲、すごい衣装で歌ってたんですよね。なんでパラシュートをつけてたんですか?

――リアルタイムで見ていた世代は「なんかカッコイイ」と受け入れてましたが、言われてみれば確かに意味が…。なお発売は1980年1月1日。あえての元日でした。80年代のスタートと同時に世に出た曲で、作詞はこの後の「コピーライターブーム」をけん引した糸井重里氏。いま振り返ると、後半でバブル期を迎える80年代日本の幕開けにふさわしい曲です

桜司:時代性を表した衣装ってことですか?

――“スーパーシティ”(歌詞から)になった東京を空から見ていたイメージでしょうか

マーティ:電飾がついたパラシュートの衣装って、向こうで見たことないです。僕はこの曲、東京マラソンのスタート地点で演奏しました。イントロからギターの音がひずんでるじゃん。基本的にハードロックだから、ヘビーに演奏しやすいんですよ。

紅竜:でも、この曲はそんなにハードに聞こえないですね。

マーティ:沢田さんのボーカルの音量が大きくて、ギターが小さく、プラス、ロックぽくない特徴的なシンセの音が入ってるからです。うまくミックスされてますね。

――この少し前、79年9月にYMOが発表したアルバムに「テクノポリス」という曲が入っていて、曲中で「TOKIO」と繰り返しています。シンセの音や曲名にYMOの影響が見えますね。テクノポップをいち早く取り入れています

桜司:時代を捉えた曲なんですね。マーティさんはどう聴きましたか?

マーティ:かなり面白い曲ですね。というのはハードロックがベースにあるのに、メロディーがとてもハッピーじゃん。こういう組み合わせは欧米にはないんですよ。向こうではハードな曲はダークで攻撃的で怖いイメージ。ハッピーなメロディーはあまり乗らないんです。例えばサビの「やさしい女が眠る街」の部分、こことてもハッピーなメロディーです。でもギターは音がひずんでアグレッシブです。

紅竜:マーティさん作曲の私たちの曲も、ハッピーなメロディーでギターはアグレッシブですね。

マーティ:そう、あれは日本だからアリな曲です。ハッピーなメロディーとハードロックの融合は、アメリカ人は受け付けないんですよ。発想の中にそういうのないし、ロックはかっこつけるから、ハッピーなのはダメなんです(笑い)。日本はこういう曲が多いから、カバーしがいがあります。カバーアルバム何枚も出しました(笑い)。

紅竜:実は叔母の家から、当時の沢田さんのブロマイドがたくさん出てきたんです。その写真がすごくかっこいいんですよ。お化粧していたり。

――沢田さんは70年代の「男が化粧とかあり得ん!」という時代に、英国発の「グラムロック」を取り入れて、メークしてテレビ出演してました。ポップスターだけど“ロック”な心、反骨精神を持って時代を切り開いた人です。次回は70年代にさかのぼりましょう。

☆ふだんじゅく=男装ユニット。「人を元気にする」という活動理念のもと、歌やパフォーマンスを行うほか、男性ファッション誌のモデルも務めている。11月6日にニューシングル発売予定。

☆マーティ・フリードマン=米・ワシントンDC出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍した。04年から日本に拠点を移し活躍中。風男塾のシングルカップリング曲「Excuse You!」を作曲&プロデュース。

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