2021年の上場企業の早期・希望退職者募集人数が6月3日、1万225人に達した。2019年から3年連続で募集人数が1万人を超えた。1万人を超えたのは前年(9月14日)より約3カ月早く、上場企業の人員削減の動きが広がっている。実施企業数は前年同日(33社)より17社多い50社。募集人数は、前年同日(6104人)より4121人多い。
今後も、コロナ禍による業績への影響が長期化する企業を中心に、実施企業数、募集人数ともに増勢をたどるとみられる。
業種別 アパレル・繊維製品が8社でトップ
6月3日までに早期・希望退職者の募集が判明した上場企業は50社を数える。業種別では、消費増税や外出自粛・在宅勤務の広がりで販売が低迷するアパレル・繊維製品の8社が最多。次いで、生産拠点や事業集約が進む電気機器が7社と続く。
さらに、コロナの影響を受けるサービスの4社は、いずれも観光だった。観光関連の募集は、過去10年間なかった。
また、航空、鉄道を含む運送は4社で、2013年以来、8年ぶりに発生した。業種による新型コロナの影響はまだら模様に広がり、雇用面でも明暗を分けている。
通期利益別 赤字企業が約7割
募集が判明した50社の通期利益別では、約7割(構成比68.0%)に当たる34社が最終赤字だった。
サービス関連(観光)、運送、外食も実施全企業が赤字で、コロナ禍の影響が直撃。アパレル・繊維製品も1社を除く7社が赤字で、業種による“二極化”が鮮明となった。
募集人数1000人以上の大型募集は3社、一部を除き小規模募集が集中
募集人数(募集時点の人数が非開示の場合は応募人数を適用)は、日本たばこ産業がパートタイマー、子会社の従業員を合わせて計2950人が対象で最多。次いで、KNT-CTホールディングスが1376人、LIXILが1200人で、1000人以上の大型募集は3社に達した。
一方、募集人数100人以下(若干名含む)は27件(構成比54.0%)で半数を超えた。アパレルや外食などの中堅企業のほか、製造業は全社的な募集ではなく、拠点の閉鎖や部門別での実施など小規模での実施も散見された。
新型コロナのワクチン接種が各地で取り組まれているが、緊急事態宣言の再延長で観光、外食、小売、交通インフラなどは営業活動の制限が続く。このため、多くの業種で業績回復には時間を要するが、雇用調整助成金の特例措置も一部地域を除き規模縮小の段階に入った。上場企業の早期・希望退職募集は、業績不振が長引く労働集約型企業を中心に、下半期、加速する可能性を残している。
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