【追う!マイ・カナガワ】どうする119番(下)管轄外への対応、実はさまざま「かけ直して」「転送する」

119番通報を受信する横浜市保土ケ谷区の市消防司令センター

 神奈川県内33市町村には消防本部などが24ある。119番通報の管轄外への対応について、指令業務を担う18消防にアンケートを実施した。

 横浜市と同様に現地の消防の電話番号を伝え、かけ直してもらうと回答したのは川崎などの5消防。大規模な自治体では通報件数も多いこともあってか、「回線がふさがり、管内の通報に対応できなくなる」といった理由が目立った。

 状況に応じて転送したり、通報者に番号を教えてかけ直してもらったりすると回答したのは、相模原や横須賀など6消防。中規模自治体が多く、「管内で大きな災害が発生している場合は転送できない」「通報者が高齢者など、かけ直しが困難と思われるときは転送」などと対応している。

 遠隔地でも転送すると回答したのは小田原や秦野など6消防だ。

 管轄外への出動要請が近隣自治体の場合は、どの消防でも番号をあらかじめ登録しており、転送しているという。市境などでの通報では電波状況によって他市の消防につながることもあるからだ。

◆統一基準は?

 総務省消防庁に全国の状況も確認した。

 「国の統一基準はありませんが、遠隔地へ転送したりかけ直してもらう場合でも連絡先が分かるよう、全国の消防の電話番号リストを配布しています」

 同庁によると、過去に通報を受けた消防が遠隔地の消防の連絡先が分からず、転送できなかったケースがあり、通報者から問題提起があった。そのため2018年からリストを配布し、毎年更新しているという。

 全国的に起こりうる問題なのに、統一基準がないのはなぜか。同庁は「通報を受けた消防管内の災害発生状況なども違うので、現場を理解している地元の消防で判断して対応してもらうしかない」と説明した。

◆通報者の行動

 では、通報者はどう行動すればいいのだろう。

 県内消防へのアンケートでは、通報者に望む行動として相模原や平塚など8消防が「とりあえず119番通報する」を選択。「一般市民では消防指令センターの番号は分からない」「自治体によっては指令業務の共同運用などで別の消防本部に転送される場合がある。迷わず119を」などの理由が挙がった。

 「事前に番号を調べて登録しておき、現地に直接電話を」を選んだのは鎌倉や藤沢など7消防。転送や、番号を教えるとなると対応に時間がかかり、出動も遅れるといった理由だ。

 一体、どれが正解なのか。消防庁にも聞いた。

 担当者は「ケース・バイ・ケース」と前置きし、「119番通報では通報者の位置情報が送られたり、優先的につながったりと、いろいろ仕掛けがある。緊急時は一般電話より119番を、というのが正直なところです」。できる限り、現地で119番通報をすることが望ましいようだ。

 その上で、高齢の家族などが離れて住んでいる場合、前もって現地の消防に相談するのも手だと教えてくれた。「例えば電話以外にも、ペンダント型の装置を押すと緊急通報が入るといった自治体の見守りサービスもある。緊急時はどうすべきか、消防ごとにアドバイスがもらえるのでは」

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