【安田記念】ダノンキングリーGⅠ初V 萩原師「正直、どの距離がいいのかつかめていません」

川田はテン乗りのダノンキングリーで最上の結果を残した

第71回安田記念(6日=東京芝1600メートル)で、断然人気のグランアレグリアを破ったのは8番人気の伏兵ダノンキングリー(牡5・萩原)。展開のアヤ、鞍上の勢い…。様々な声があるのは確かだが、馬群で苦戦するマイル女王を豪快に外から差し切って待望のGⅠ初制覇。未完の大器が大きな一歩を踏み出したのは間違いない。

昨年のGⅡ中山記念を勝った後は、GⅠで3→7→12着。前走の天皇賞・秋では大差のしんがり負けだった。さらに7か月ぶりの実戦を考えれば、8番人気はファンの当然の“ジャッジ”かもしれない。ただし、初騎乗となる川田の感触は違っていた。

「たくさんともに競馬をしてきましたし、見ていたので、いろいろイメージする中で競馬を迎えられました。返し馬では正直、あまりいい感じではなかったですが、その後もいろいろ対応しながら競馬までの時間を過ごしました。競馬自体はとてもいい走りができたと思います」

鞍上は初コンビながら、同馬の能力、特質を見極めた上で最上の結果を出した。

道中は後方8番手で待機。直線ではスムーズに外から追い込み態勢に入る。馬群を抜け出すのに苦戦するルメール=グランアレグリアを左に見ながら川田=ダノンキングリーは右ムチで叱咤し、全身を躍動させて猛追する。内のグランアレグリアにアタマ差出たところがゴールだった。

上がりはダノンキングリー=33秒1に対して、グランアレグリア=32秒9。展開のアヤもあったが、これも競馬。勝負の女神は紆余曲折を経て、遮二無二Vゴールを目指した彼にほほ笑んだ。

「どこかでGⅠを勝たせなければ、と思ってやってきました。やっと取れてホッとしています。勝因はやはりジョッキーの好騎乗ですね。馬の状態を把握して力をフルに出し切ってくれました」

萩原調教師の表情が緩む。かつてはクラシックの有力候補だった。3戦3勝で挑んだ皐月賞は3着、そして日本ダービーは2着。その後はマイル~中距離路線を進んだものの、GⅡを2勝(毎日王冠、中山記念)後はGⅠでは厳しい戦いの連続。長い雌伏の末に、今年重賞11勝目(GⅠは高松宮記念、大阪杯V)と絶好調の川田との出会いが…。そして栄光のVゴールが待っていた。

「素晴らしいメンバーの中、勝つことができましたし、この後もこの馬らしく歩みを進められたら、と思います。また、走る時に楽しんでもらえたらと思います」

勝負の5歳秋に向けてエールを送った川田。萩原調教師は「マイルに対応できましたが、正直、どの距離が一番いいのかつかめていません」と今後の路線は決まっていない。それでも最強の鞍上を大きな刺激剤に、殻を破ったのは確か。今秋の最大目標は10・31天皇賞・秋か、11・21マイルCSかそれとも…。いずれのステージに立ったとしても、もう主役級の扱いでいいはずだ。

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