倒産件数は前年同月の反動で11カ月ぶりに増加、50年間で2番目の少なさ
2021年5月度の全国企業倒産（負債額1,000万円以上）は、件数が472件（前年同月比50.3％増）、負債総額は1,686億6,400万円（同107.3％増）と、そろって大幅に増加した。
前年同月は、新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言で裁判所の一部業務の縮小などで、50年ぶりの低水準となった反動から件数は、11カ月ぶりに前年同月を上回った。
ただ、5月としては1972年以降、2020年（314件）に次ぐ、2番目の低水準にとどまった。
負債総額は、2カ月ぶりに前年同月を上回り、単月では2年ぶりに1,000億円台に乗せた。ホテル経営の（株）東京商事（東京）が負債1,004億8,300万円を抱え、東京地裁から特別清算開始決定を受け、負債総額を押し上げた。負債1,000億円超の倒産は、2019年2月のＭＴ映像ディスプレイ（株）（大阪・負債1,033億2,600万円）以来、2年3カ月ぶり。この1社で負債総額の約6割（構成比59.5％）を占めた。負債1億円未満は356件（構成比75.4％、前年同月204件）で、引き続き小・零細規模の倒産を主体とした推移が続いている。
5月の「新型コロナウイルス」関連倒産は123件（前年同月64件）を数え、2021年に入り、5カ月連続で100件を超えた。2020年2月からの累計は1,425件に達した。
- 「人手不足」関連倒産のうち、「後継者難」が36件（前年同月25件）
- 形態別件数：破産が422件。法的倒産の構成比、12カ月連続で90％台
- 都道府県別件数：前年同月を上回ったのが25都府県、減少18道県、同数4県
- 負債別件数：負債1億円未満の構成比が75.4％、1,000億円以上が2年3カ月ぶりに発生
- 業種別件数：飲食業、道路貨物運送業、生活関連サービス業，娯楽業などで増加
- 従業員数別件数：10人未満の構成比が91.3％、300人以上は5カ月連続でゼロ
- 中小企業倒産件数（中小企業基本法に基づく）は472件で、2カ月連続で100.0％
産業別 最多はサービス業他、10産業のうち8産業で前年同月を上回る
2021年5月の産業別は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業と製造業を除く8産業で前年同月を上回った。
最多はサービス業他の155件（前年同月比86.7％増）で、9カ月ぶりに増加した。
また、小売業は53件（前年同月比10.4％増）で13カ月ぶりに前年同月を上回った。ただ、2月と並び2021年では最少。
そのほか、建設業95件（同93.8％増）が14カ月ぶり、卸売業59件（同15.6％増）が9カ月ぶり、情報通信業13件（同116.6％増）と金融・保険業2件（前年同月1件）が4カ月ぶり、運輸業21件（前年同月比75.0％増）と不動産業24件（同380.0％増）が2カ月ぶりに、それぞれ増加した。
一方、製造業は45件（同13.4％減）で13カ月連続、農・林・漁・鉱業は5件（前年同月7件）で5カ月連続で、それぞれ前年同月を下回った。
地区別 北海道と東北、中国、四国を除く5地区で前年同月を上回る
2021年5月の地区別件数は、9地区のうち、北海道と東北、中国、四国を除く5地区で前年同月を上回った。九州43件（前年同月比16.2％増）は、2020年6月以来、11カ月ぶりに前年同月を上回った。関東182件（同85.7％増）は10カ月ぶり、近畿117件（同64.7％増）と中部60件（同53.8％増）は9カ月ぶり、北陸20件（同122.2％増）は7カ月ぶりに、それぞれ増加した。一方、四国9件（同18.1％減）は、2020年5月以降、13カ月連続で前年同月を下回った。また、中国18件（同25.0％減）は9カ月連続、東北14件（同6.6％減）は6カ月連続、北海道9件（同10.0％減）は2カ月連続で、それぞれ減少した。
※地区の範囲は以下に定義している。
- 東北（青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島）
- 関東（茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨）
- 中部（長野、岐阜、静岡、愛知、三重）
- 北陸（富山、石川、福井）
- 近畿（滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山）
- 中国（広島、岡山、山口、鳥取、島根）
- 四国（香川、徳島、愛媛、高知）
- 九州（福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄）
当月の主な倒産
[負債額上位5社]
（株）東京商事／東京都／ホテル経営ほか／1,004億8,300万円／特別清算 （株）コイケ／愛知県／婦人服・子供服卸／72億5,400万円／民事再生法 （株）パネイル／東京都／電力需給管理システム開発ほか／61億4,500万円／民事再生法 （株）ＫＳ／東京都／加工食品製造販売ほか／33億円／特別清算 （株）九設／大分県／管工事、空調工事／30億6,400万円／破産
