【東京五輪】JOC 経理部長急死に沈痛 「絶対に許されない」職員たちを憤怒させた一部報道

JOCの山下泰裕会長

日本オリンピック委員会(JOC)の経理部長男性(52)の自殺とみられる死は、東京五輪に暗い影を落としている。山下泰裕会長(64)は沈痛な表情を浮かべ、多くの関係者は口をつぐんだ。物々しい雰囲気に包まれるJOC内では〝ある報道〟に激怒する関係者や、亡き男性を悼んで涙する職員も…。開幕まで45日を切った中、ただならぬ雰囲気が漂っている。

男性は7日午前9時20分ごろ、東京・品川区の都営浅草線中延駅で普通電車にはねられ、搬送先の病院で死亡。ホームから線路に飛び込む姿が駅員に目撃されており、警視庁は自殺とみて調べている。衝撃的な事件から一夜明けた8日朝、東京・新宿区のJOCオフィスは一見変わらぬ雰囲気だった。同僚と昼食に出る職員、業者がビルに出入りする光景は普段通り。だが、実情は全く違った。

午後2時すぎ、山下会長は東京・晴海で開かれる大会組織委員会の理事会へ向かうため、JOCオフィスから出て来た。明らかに動揺し、硬い表情だった。「経理部長の件ですが…」という問いかけに「連絡は入っています。ご遺族が確認した、と。確認するまでは、ご遺族は信じたくないということで、周りには一切連絡していなかったようです」と沈痛な面持ちで経緯を説明した。

当初、JOCは「事実を確認できない」としていたが、7日の深夜になって山下会長に一報が入ったという。五輪直前での衝撃的な出来事をどう受け止めているのか? そう問うと「申し訳ないけど、まだ細かい事実関係が確認できていない。これ以上はコメントできない。勘弁してください」と話すのが精一杯だった。だが、去り際に「それから」と切り出した山下会長はこんな本音を漏らした。

「役員でもないのに実名で報道されていた。ご遺族のお気持ちを考えるとね…」

7日午前の第一報では男性の実名が報じられた。その時点で、警視庁広報は取材に「50代の男性が電車と接触して亡くなったのは事実ですが、その方が誰であるかは発表していません」と回答している。しかし、一部メディアは捜査関係者からの情報として実名報道に踏み切ったのだ。

これには山下会長だけでなく多くの関係者が疑問を感じ、中には「あの報道は絶対に許されない」と激怒する職員もいた。また、最も印象的だったのは男性の死を悼んで涙していた女性職員だった。オフィスを去る際、目を真っ赤に腫らし、本紙の取材を完全にシャットアウトした。

男性は遺書を残していないという。経理部長だけに一部では「五輪とカネ」と結びつけるかのような報道もあるが、男性を知る関係者は「芯が強く、むしろ不正と闘うタイプの人。招致の問題とも全く関係ない立場」と証言。「何らかのメッセージでは」と憶測を口にする関係者もいるが、真相は闇の中だ。

相談窓口は厚労省ホームページ(https://shienjoho.go.jp/)で検索できる。

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