智弁学園(奈良)で選抜V、大商大でMVP・福元悠真外野手(4年)
その姿は今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。第70全日本大学野球選手権記念大会に出場している今秋のドラフト候補のスラッガー・大商大主将・福元悠真外野手(4年)はプロに進んだ一人の男の雰囲気を忘れることはない。
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「やっぱりちゃうなぁ」
去年11月に行われた関西地区大学選手権大会。大商大が準決勝で戦ったのが、佐藤輝明(阪神)がいる近大だった。
福元が回想する。
「ヘッドホンをして、アップしてたんですよ(笑)その時点で“マイワールド”やなって。オーラはやっぱりすごかったです」
所属リーグが異なるため、実際に佐藤を目にしたのはこの時が初めて。試合前から雰囲気に圧倒されたというが、この時間こそが福元にとって最高の“授業”となった。
「ちょっと甘かったら、持っていかれる。怖いなって。ファールの打球でも、高く上がるというか、凡退でも怖さはありました」
右翼の守備に就いていた福元は、そう近くはないところからでも佐藤の凄さを感じていた。放つ打球はもちろんだが、他打者との圧倒的な違いは「ピッチャーへのプレッシャーの与え方」。空振りでもファウルでも、凡退しても怖い。打つ、打たないではなく、打席に立つだけでも観衆を惹きつけていた佐藤の姿に打撃ヒントを得たという。
9日の福井工大戦に登場
「普通なら打者が投手に合わせ、打席に入って構えたりすると思うんですけど、それを逆にしました。投手が打者に合わすくらい。『自分に合わせろ』みたいな感じで、自分のペース、リズムでルーティンをしてから入るようにしてから、焦らなくなりました」
関西六大学野球春季リーグでは打率.350、11打点の活躍で最優秀選手にも選ばれた。同リーグで戦う同じくドラフト候補の151キロ右腕・北山亘基投手(京産大・4年)にも「打ちそう。懐が深いから投げづらい」と言葉をかけられたといい、周囲も福元の打席での雰囲気の変化を感じ取っている。
7日に行われた試合で大商大は東亜大に6-3で勝利したが、4打数無安打に終わった。それでも1打席目からゆっくりとバッターボックスに歩を進めていた。ベース板の上に重ねるようにバットを伸ばすルーティンからは、完全に自分のリズムで投手に相対していたよう見える。「しっかり修正したい」と臨む次戦は9日の福井工大戦。今度は佐藤輝明のような打球を見てみたい。(市川いずみ / Izumi Ichikawa)
市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。元山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。NHKワースポ×MLBの土日キャスター。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。