「待ち遠しかった」 長崎市内飲食店 時短解除 コロナ禍と戻る日常【ルポ】

昨日まで営業時短を要請されていた時間帯に酒や食事を楽しむ常連客(右)=8日午後8時11分、長崎市岩川町、倭からん我零時

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため県が長崎市内の飲食店に要請した営業時間短縮の期間が終わった翌日の8日、市内のある居酒屋を訪ねると、スタッフは久々の酒宴を楽しむ客を笑顔で出迎えていた。
 「久しぶりに通常の時間帯の営業が始まる。気合を入れていこう」。正午すぎ、「倭からん我零時」(同市岩川町)代表の片山禎久さん(50)が従業員6人に呼び掛け、開店準備を本格化させた。料理長の川原圭四朗さん(49)は「お客さんが戻ってきてくれるのが待ち遠しかった。にぎわいも居酒屋の楽しみだから」。仕込みながら笑みがこぼれる。
 和洋中の創作料理を提供し、多様な個室を備える。コロナ禍前の週末は60人収容の大部屋が埋まるほどだったのが、感染が拡大した昨年4月は予約が途絶えた。片山さんは「お客さんが消えたわけじゃない」と自分たちの味を伝える方法を模索。店の料理を自宅でも楽しんでもらおうと、冷凍食品セットのネット販売を始めた。
 今年は4月28日から時短要請に応じ、対応を考えた結果、5月17日から6月5日までランチ営業にも乗りだした。市から前年度や前々年度と比べた減収分に応じた協力金が支給されるが、片山さんは「十分とはいえない」と苦笑いする。
 開店時間の午後5時を迎え、男女3人が一番乗り。60代自営業女性は「今日からは時間を気にせず飲める」と刺し身をつまんだ。時短期間中は酒類の提供は7時、営業は8時までだったが、それを過ぎても家族連れなど7組が会話を楽しんでいる。本日のお薦めはネット販売で好評を得た野母崎産ウツボ。同僚と訪れた同市江川町の男性会社員(58)は「ずっと家飲みだったから」とうれしそうにウツボのしゃぶしゃぶを口に運んだ。
 感染防止のため、客席の間隔を空けながら営業を続ける。ホール担当従業員の八木皇介さん(35)は「やや日常が戻ってきた感じもするが、コロナが収束するのは見通せないし上手に付き合っていくしかない」。料理を手に忙しそうに客席に向かった。


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