デンカががん治療用ウイルスの国内製造販売承認、約20億円を投資して五泉事業所に建屋建設と設備導入

デンカ株式会社(本社:東京都中央区)は11日、東京大学医科学研究所の藤堂具紀教授と共に商用製剤生産技術の開発を進めてきたがん治療用ウイルスG47Δ製剤「デリタクト(一般名:テセルパツレブ)」について、悪性神経膠腫の治療を目的とした再生医療等製品として国内で条件及び期限付き承認に該当する製造販売承認を第一三共株式会社が取得した。デンカは第一三共株式会社からの委託を受けて、五泉事業所(新潟県五泉市)で同製品の生産を担う。

同製品は、藤堂教授が開発した単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1) を遺伝子改変したがん治療用ウイルス製剤で、今回の承認により悪性神経膠腫を対象として世界で初めて承認されたがん治療用ウイルス製剤。ウイルスそのものを製剤化したものであるため、その商用製剤の生産には、大規模なウイルス培養技術や特殊な試験技術の確立が必要とされることから、長年に渡りワクチンとウイルス検査試薬の開発・製造を行ってきたデンカの技術やノウハウが十分に発揮できる。デンカは、実用生産を通じて、アンメット・メディカル・ニーズ(未だに有効な治療法がない医療ニーズ)が高い悪性神経膠腫における新たな治療の選択肢を提供することで、患者に貢献できると考えている。

この画期的ながん治療用ウイルス製剤の実用生産を実現するため、デンカは2015年に本品の製造工程の開発に着手し、約20億円を投資して五泉事業所にてがん治療用ウイルス製剤の生産に必要な建屋建設と設備導入を進めてきた。2017年10月の竣工を経て、商用製剤生産に必要な製造プロセスの確立により、国内医療機関に必要とされる製剤数の確実な供給が可能になった。なお、2021年度当社連結業績への影響は精査中。デンカは、経営計画「Denka Value-Up」においてヘルスケア領域を重点分野と位置づけ、インフルエンザワクチンや各種ウイルス抗原迅速診断キットなどの感染症領域に加え、がん領域においてもさまざまな新規事業に取り組んでいる。今後もSDGsを羅針盤に、予防・診断・治療の各領域における製品の開発と製造を通じて世界の人々のQOL向上に貢献していく方針だ。

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