〈令和2年7月 熊本県豪雨災害〉「日刊 人吉新聞」発 発災から1年 復興の道険しく〈下〉

ダム問題が再燃

 昨年7月の発災後、被災家屋の家財や泥出し、災害ごみ搬出などでボランティアの助けが求められたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止で受け入れは熊本県内在住者に限定。被災者のニーズに対し人手が不足して進まず、避難所もコロナ対策に神経をとがらせる日々が続き、コロナ禍の二重苦を強いられた。

 その後、人吉球磨地域では、4市町村に応急住宅の仮設団地が20団地、18棟698戸が整備され、避難所から順次入居が進んだが、入居期間は2年。高齢者も多く、住まいの再建に不安を抱いている。

 被災地では、被災した家屋や建物の公費解体が本格化。人吉市中心部でも店舗が姿を消してさら地が広がり始めている。元の場所で再建にこぎつけた事業者もいるが、「人がいない状態では商売はできない」と悩む。

 梅雨を前に球磨川と支流では堆積土砂の撤去が進む中、被災者が生活再建を進める上で課題に挙げるのは、球磨川の治水対策の行方。

 県は「緑の流域治水」を打ち出したが、手法の一つとして球磨川の支流・川辺川に「流水型ダム」が浮上している。

 川辺川では、半世紀にわたりダム計画の賛否をめぐって揺れてきたが、13年前に蒲島郁夫県知事が計画の白紙撤回を表明。休止状態が続いていた中、豪雨災害後に新たなダム計画が持ち上がり、市民団体は強く反発。復興へ向け地域が一つになることが求められる中、ダムをめぐって住民対立を招かないかと懸念される。

 ダム以外にも「遊水地」「引堤」案が球磨川沿いの被災地域に示され、元の場所で再建を進めていた住民、農地の早期復旧を望んでいる農家たちも困惑している。おわり

球磨村渡の茶屋地区では家屋がなぎ倒され肥薩線(中央)も被災。治水対策で引堤案が浮上している(昨年7月5日)

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