ライオンズの若き龍・綱島龍生選手の活動報告 〈15〉重い扉をこじ開ける

 突如目の前に広がった夢の舞台。4月4日、綱島龍生の前に広がっているのはCAR3219フィールドではなく、1軍の試合が行われる広い福岡PayPayドームのグラウンドだった。「緊張しています。でもしっかり準備していたので、やってやろうという気持ちです」と、少し硬い表情の中にも4年分の強い思いが感じられた。

1軍初昇格を果たし、福岡PayPayドームのベンチで笑顔の綱島(4日、球団広報部撮影)

 4月3日のチーム練習後に1軍昇格を告げられ、一番に連絡をしたのは両親だった。「おめでとう、頑張ってねと泣いて喜んでくれました」。携帯電話は自然と母親へ発信していたという。

 本人から電話連絡を受けた鈴木敬洋育成アマチュア担当は「二人して泣きそうになっていました」と鳥肌が立ち、「まずは楽しんで悔いのないように」と鼻息が荒くなっている綱島に優しい口調でそう伝えた。

 3月20日に開幕したイースタン・リーグ。綱島は2軍開幕となり途中出場が続いていたものの、3月28日の横浜DeNAベイスターズ戦で5回途中出場から2打席連続でライト方向にヒットを打ち、そこから調子を上げていった。「打席でいろいろなことを考えすぎて、投手としっかり勝負できていなかったので、思い切って何も考えず初球から振っていくことだけを意識して打席に入るようにしました」と声を弾ませた。

 3月30日からはスタメンを勝ち取り、4月6日までで本塁打1本、三塁打4本、打率は4割5分5厘と高打率をマークしている。

 打席では好きなストレートを待ち、初球から振れる準備をする。追い込まれたら来た球全てに食らいつく。このシンプルな考えこそが気持ちに余裕が生まれ、結果を出せている要因だという。

 〝基本に忠実に〟という意識を常に持ち続け、結果が良かった試合後でもコーチと一緒にフォームの見直しをしている。体だけでなく、頭にもいいイメージを持っておくために試合動画を見る回数も増えた。苦しい時期も経験しているからこそ、思い描いていた〝センター方向に抜ける長打〟が打てている今、綱島の表情は明るい。

 守備はまだ課題が残り、特に自分の左側に来た打球に苦手意識を持っている。松井稼頭央2軍監督からは「手首をもっとリラックスして捕球してみたら」とアドバイスをもらい、練習に取り組んでいた。

 打球に対してグローブが横に向いている綱島は小さなイレギュラーに対応できていない。手首が固くロックされてしまっているようなイメージだ。練習では捕球面を正面に、グローブを縦にするようなイメージでやってみると「グローブを柔らかく使えるようになったと思います。横に向けるものだと思っていました」と驚いた様子。「何年も野球をやっているのに、まだ知らないことがあるなんて」と目を丸くした。

 「今年4年目を迎え、自分でも危機感を持っています。1日1日を大切に死に物狂いで頑張っています。必ず1軍に呼ばれるように、今の状態をキープしていきたいと思います」と語っていた綱島が、大きくステップを踏むべく、まずは重い扉をこじ開けた。
(西武ライオンズ広報部 亀田礼子)

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