【今週のもう一枚】在来線特急「こだま」に乗ってあかるくたのしく「ON砲」

隣り合った列車の席で談笑する長嶋茂雄(左)と王貞治

列車内で隣り合わせになった長嶋茂雄と王貞治が、笑顔で話している。1963年5月6日、東京駅で撮られたもので、巨人はこの日、翌日の中日戦に向けて名古屋へ出発した。

プロ野球は4月13日に開幕し、この時点で19試合を消化。2人ともすでに10本塁打をマークしており、他球団の投手を震え上がらせていたが、おなじみの「ON砲」という呼び方が定着するのもこの年だ。

2018年5月10日付紙面に掲載された、越智正典氏の野球コラム「ネット裏」によれば「日本では『デイリースポーツ新聞社』のデスクが『M・Mキャノン』にならって王貞治、長嶋茂雄をあかるくたのしく『ON砲』と命名した」とある。「M・Mキャノン」とは、本塁打を量産したヤンキースの3番ロジャー・マリス、4番ミッキー・マントルのコンビを指す。

63年、王は打率3割5厘、40本塁打、106打点で2年連続本塁打王を獲得。長嶋は打率3割4分1厘、37本塁打、112打点で首位打者と打点王に輝き、2人で打撃3冠を独占。チームもON砲の活躍で2年ぶりにセ・リーグを制し、日本シリーズでも宿敵・西鉄を倒した。

ちなみに列車は在来線特急としての「こだま」で、翌64年9月いっぱいで廃止。10月1日に東海道新幹線が開業し、「ひかり」とともに新しい「こだま」が走り始める。(敬称略)

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