【緊急避妊薬のスイッチ化】当の薬局薬剤師はどう考えているのか?<4>/薬経連会長・山村氏「市単位で実績つくり“任せられる”状況に」

【2021.06.13配信】厚生労働省は6月7日、「第16回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチ検討会議)を開き、緊急避妊薬のスイッチに関して議論を再開することとした。当の薬局業界はどのようにこの問題を捉えているのか。保険薬局経営者連合会(薬経蓮)会長の山村真一氏は「市といった単位で成功事例を示していきたい」との方針を示すとともに、薬局薬剤師の取り組みを知ってもらうことで、今回再議論を要望した市民団体の動きを後押ししていきたい考えを示した。

6月7日、「第16回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチ検討会議)では、出席していた日本薬剤師会の委員からは緊急避妊薬のテーマに関して発言はなかった。

このことには厚生労働省関係者からも「落胆した」との声が聞こえる。スイッチ化の賛否だけにかかわらず、薬局薬剤師がこれまでしてきたことや、できることに関して、社会に知ってもらう好機でもあったはずなのに、どうしてこうした機会をいかすことができないのかという、もどかしさが背景にある。

一方で、薬局薬剤師はこの問題の重要性を認識していないわけではない。
受け皿となる役割として、現状にもどかしさを感じている薬局薬剤師は少なくない。
保険薬局経営者連合会会長の山村真一氏もその一人だ。

山村氏は、「現状はまるで映画のシン・ゴジラのようだ」と指摘する。
「映画ではゴジラという脅威がそこまで来ているのに、それに対する対応の優柔不断さが描かれていて、そこが面白くて目が離せなくなるのですが、何となく私たちの今の状況に似ているのではないかと思いました。薬剤師の中にも、ムーブメントを起こすキッカケの種火がそこに生まれているのに、それが見えなかったり、過小評価したり、その意味が理解できなかったりして決断出来ない人たちが多いと言えそうです」(山村氏)

その上で、具体的なアクションプランを薬局側から示していきたいと意欲を示す。
「緊急避妊薬を薬局で販売することを実現するために、私たちが今行うべきことは、具体的なアクションプランを示し動きを起こす事です。そしてその実現のために、市場のことは市場に聞いて、作戦行動を考えなくてはならない時に来ているのだと思います」とする。

具体的なアクションプランの提案は以下の通りだ。

まず緊急避妊薬の位置づけについては、「現在検討会ではOTCとすることは「否」となっていること、要指導医薬品となった場合、原則3年で一般用医薬品へ移行してしまう現状を考えると、処方せん医薬品以外の医療用医薬品と位置付ける改正が現実的だと思います(事実上のBPC化)」とする。

具体的行動に関しては、「実態をまずは作り、その既成事実を後ろ盾にして大きく行動に移していくという流れが良い」とし、「実態づくりがしやすいエリアの選定として、“県”でもなく“市”単位の大きさが適切だと思います」とする。

「市という単位で、生活者が真に求める販売体制を実装していく必要がある」とする。
「検討会で指摘された懸念の払拭から取り組み、相談者が安心して薬局にアクセスできる仕組み作り、プライバシーに配慮した薬局構造を有する事、座学で研修を受けるだけではなく、そこからバージョンアップさせ、例えばロールプレイングで訓練も行うこと等、一定の新しい自主的な評価基準を設定し、クリアした薬局・薬剤師を地元薬剤師会や市ホームページに掲載して、相談者がアクセスしやすい環境を作るとか、薬局外に“緊急避妊薬を取り扱える薬剤師がいます”といったシールを貼る等、市場が求める、あるいは市場の期待を超える販売体制の実現を目指すのです。そして、その自主的な評価基準は、今後ブラッシュアップを重ね全国評価基準に格上げさせていくこともあるかもしれません」(山村氏)。

山村氏の案は、現状での指針に準拠した行動の範囲内で実行しつつ、地域独自でその指針を上回る現実的なサービス内容を実装することだ。
「医師会を敵に回すことなく国民を味方につけ、“仮にいつ薬局での販売が可能になったとしても、私たちはいつでも対応可能です。もう既に準備は出来ていますから!”と腕組みしながらドーンと構え、静かに微笑んでいれば、現在活動している市民団体の方からみても、安心して信頼できる力強い後ろ盾になるのではないでしょうか。そして実はそのような行動を望まれているのではないでしょうか」(山村氏)。

保険薬局経営者連合会には、市薬剤師会の会長も複数在籍している。
山村会長は「いますぐ行動を起こしていきます」と意欲を示している。

最後に、山村氏は、医薬分業に対し受動的な側面があったとの振り返りも語る。
「わが国の医薬分業は国家主導で受動的に進展し、薬局の現場も2年毎の調剤報酬のハードルを一つ一つクリアし努力を積み重ねながら現在に場所に至った訳ですが、医薬品医療機器制度部会で“医薬分業のメリットが感じられない”と言われてしまいました。どうも辿り着いた場所が違っていたようです。確かに振り返ってみると、薬局の現場は今まで目の前の算定要件を満たす業務に追われ、医薬分業という仕組みを国民に支持されながら根付かせるという能動的なアクションを怠ったまま現状に至ってしまった結果なのではないでしょうか。そのような状況の中、薬剤師による新型コロナワクチンの接種とか、緊急避妊薬を薬局で販売出来るようにするといったムーブメントが国民の側から沸き上がってきました。私たちは思いもかけず、今、正に千載一遇、渡りに船、私たちが大きく変わるまたとはないチャンスに遭遇しているとも言えるのです」としている。

実際は市薬剤師会の中でも、慎重な意見を示す薬剤師もいるため、意思の統一は難しいとの指摘もある。薬剤師の中でも対話し、この問題に向かい合っているステージなのかもしれない。少なくとも、緊急避妊薬のスイッチO T C化再議論が、薬剤師の中にも大きなきっかけを投げかけたことは間違いない。

© 株式会社ドラビズon-line