【エプソムC】ザダル重賞初制覇も“悩ましい距離問題”

石橋の叱咤に応え重賞初制覇を成し遂げたザダル

13日、東京競馬場で行われたGⅢエプソムカップ(芝1800メートル)は、3番人気のザダル(牡5・大竹)がサトノフラッグをクビ差で制して待望の重賞初制覇。デビューから3連勝しながら脚元の不安などで軌道に乗り切れなかった未完の大器がついに覚醒した。レースを振り返るとともに今後の飛躍を占う。

レース前にはあがったものの、午後から降りだした雨。馬場状態が読みづらかったが、石橋が「操縦性のいい馬なので、雨の影響も考慮して、馬場とコースを気にしながらリズム良く走らせることを心掛けました」と語った通り、直線はやや外めの伸びるところへ誘導すると、あとは抜群の伸び脚でVロードへ。大竹調教師が「菊花賞(13着)まで彼が乗ってくれて、癖などを熟知してくれていたので」と賛辞を贈ったように、しっかり馬場を読み切ってのエスコートはお見事だった。

「ここ2週追い切りに乗って、脚元の不安がなくなり新馬から連勝していたころと遜色ないデキになっていると思った」

石橋は8か月ぶりでも状態面に手応えを感じていた。大竹調教師が現状を詳しく伝える。
「球節のクリーニングをして脚元がきれいになり、不安がなくなったことで1週前追い切りもしっかりできた。気持ちの面でも昨秋の毎日王冠(5着)の時はうるさかったが、今日は久々でも我慢できていた」

完全に復調し、精神面にゆとりも出る。5歳にしてようやく心身がかみ合ってきた。12キロ増については「成長分もあるけど、まだ少し太め残りもあった。それで勝つんだからたいしたもの」と同師。キャリアはまだ10戦。上昇の余地を残す中での勝利は、今後の大いなる可能性を物語る。

気になる今後については「1800メートルがベストなので、どこを使うか悩ましいところ」と大竹調教師は明言を避けた。サマーマイルシリーズで1800メートルのGⅢ中京記念(7月18日=小倉)があるが、現実的には今回と同舞台のGⅡ毎日王冠(10月10日)がターゲットかも…。近年は成長著しい3歳馬も参戦するレースだが、復活を遂げたザダルには昨年5着のリベンジとともに、さらなる飛躍への期待は高まる。

ゴール後、珍しくガッツポーズを見せて「乗せてもらって幸せですし、これから僕自身ももっと頑張っていきたい」と石橋は力を込めた。復活したザダルとともに、主戦もさらなる高みへと歩んでほしいものだ。

© 株式会社東京スポーツ新聞社