【緊急避妊薬のスイッチ化】市民団体が勉強会/政治家・各省庁も出席/海外調査の実効性に懸念示される

【2021.06.14配信】厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチ検討会議)に緊急避妊薬のスイッチOTC化に関して要望書を提出した市民団体「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」は6月14日、勉強会を開催した。会場は衆議院第一議員会館で、政治家や各省庁が参加したほか、全国の薬局・薬剤師からのリレートーク録画が放映された。

遠見共同代表「結論時期があいまいになる」懸念を表明

勉強会は、「緊急避妊薬スイッチOTC化実現に向けて~現場の声から考える緊急避妊薬へのアクセス~」と題されて開かれたもの。

勉強会には、以下のような複数の政治家が参加した。
参議院議員・寺田静氏。
参議院議員・福島瑞穂氏。
衆議院議員・木村やよい氏。
衆議院議員・みやじ拓馬氏。
参議院議員・梅村みずほ氏。
参議院議員・打越さく良氏。
参議院議員・塩村あやか氏。
衆議院議員・岡本あき子氏。

中でも福島氏は挨拶の中で、スイッチ検討会議に関して「調査にあまり時間をかけず速やかにスイッチOTC化してほしい」との要望を述べた。

省庁から現状に関して報告も行われた。

内閣府からは男女共同参画局推進課長の古瀬陽子氏が説明にあたり、閣議決定された方針を確実に実行できるように6月に重点方針をまとめる方針で、その中で「令和3年度中に緊急避妊薬を処方箋なしで薬局で適切に利用できるようにすることについて、医療用から要指導医薬品への評価会議で検討を開始し、国内外の状況をふまえ検討する」と盛り込む予定とした。「厚労省の検討状況を注視していきたい」とした。

厚生労働省からは3人が参加した。
医薬・生活衛生局総務課薬事企画官(医薬・生活衛生局総務課医薬情報室長併任)の安川 孝志氏は、現在のオンライン診療での緊急避妊薬の調剤に対応するための研修をおよそ9000人の薬剤師が受講済みであるとの状況を報告した。
医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課課長補佐の高畑正浩氏は、スイッチ検討会議の概要や、OTCの承認審査について説明した。
医薬・生活衛生局医薬安全対策課は、緊急避妊薬の医療用の添付文書改訂の現状について、企業とも連絡を取り合いながら正しい情報の提供に努めていることを報告した。

プロジェクトの共同代表である染矢明日香氏は検討会議に関して「海外の調査などにどれくらいの期間をかけるのか、見通しを教えて欲しい」と厚労省に尋ねた。

厚労省側は「調査の期間は委託の関係もある」としつつも「調査自体は今年度の事業」と回答した。

また、プロジェクトの共同代表である遠見才希子氏は「これまで反対意見には海外と日本では状況が違うというものがあった。海外の状況を調査しても“海外と日本は違うので”と一蹴されるのではないか。検討会議では可否は決めないことで、いつの時点で結論が出るのかも不透明になる可能性はないか。また、検討会議で異論が書き込まれた場合に企業が申請するかも不透明」と懸念を示した。

これに対し厚労省側は「そうしたご意見もあるからこそ、海外と日本は具体的にはどこがどう違うのか精査することは重要だと考えている。結論ありきではなく、検討会議の議論次第であるが、厚労省としてはそういった調査の報告はしっかりしたい」と説明した。
また企業の申請に関しては、「企業は動きづらい面もあるかと思うが、議論の状況によっては動きが出てくるのではないか」と話した。

勉強会では染矢氏が講演。「アクセス改善と正しい知識の普及は両輪で進めるべきだ」などど話した。
遠見才希子氏も講演。「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が守られる体制を目指す必要がある」と指摘した。
ビデオメッセージを寄せた共同代表の福田和子氏は世界各国で緊急避妊薬が薬局で販売されている光景を目にした体験から、「日本ではこれが手に取りづらい状況のままで本当によいのか」と指摘した。

全国の薬剤師からリレートーク

講演後は、「全国の薬剤師からのリレートーク」として、ビデオメッセージが流された。
登壇者は以下の通り。
・北海道:二十四軒薬局 高市 和之氏
・青森県:なの花薬局 アポテック根城店 尾崎 絵理奈氏
・東京都:OGP薬局 荒川店 鈴木 怜那氏
・神奈川県:健ナビ薬樹薬局パークタワー新川崎 片羽 教子氏
・静岡県:船津クリニック 婦人科・内科 船津 裕子氏
・奈良県:ピーター薬局 和田 法子氏
・福岡県:さくら薬局 舞の里店 縄田 宗親氏
・長崎県:丸一薬局 水野 和美氏
・鹿児島県:くじゃく薬局 丸田 沙生氏

薬局薬剤師からは、オンライン診療後の調剤の経験が語られたが、オンライン診療で緩和されていても、休日や夜間などで一定の時間的な制約があり、薬局で販売することでより早い服用に貢献できるのではないか、などの意見が示された。多くの薬剤師からは緊急避妊薬の販売を通して、ファーストアクセスや相談してもらえる薬局の役割、相談者の不安に寄り添える対応をしたいとの展望が示された。

そのほか、NPO法人ラサーナ理事長 福田小百合氏など、若者支援や性被害者の支援に関わる団体等からも応援コメントが寄せられた。

また、産婦人科医の宋美玄(そんみひょん)氏もコメントし、「以前よりも“性教育が先だ”という産婦人科医は減ってきているように思う。個人として緊急避妊薬のOTC化を反対している産婦人科医は少なくなっていると思う」と感触を述べた。

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