落合GM惚れ込んだ“鬼肩”がなぜトレード? 谷繁以来の正捕手期待も…逃した好機

中日からロッテへのトレード移籍が発表された加藤匠馬【写真:荒川祐史】

プロ4年目まで1軍5試合出場…与田監督就任の2019年に92試合出場

中日の加藤匠馬捕手とロッテの加藤翔平外野手の交換トレードが成立したと、両球団が15日に発表した。加藤匠は球界屈指とも呼ばれる“鬼肩”を武器に、プロ5年目の2019年に台頭。しかし2020年以降は木下拓哉捕手が扇の要を担い、今季はここまで1軍出場がなかった。元監督の谷繁元信氏以来、長年の課題となっていた正捕手争いから離脱した格好となったが、トレードには球団側の温情も滲む。

青学大4年時にスタメンを外れることも多かった加藤匠が、中日からドラフト5位指名を受けたのは2014年。当時の落合博満GMが肩の強さに惚れ込み、打撃や配球面の伸びしろを見込んでの“一芸入団”でもあった。3年目の2017年まではわずか5試合出場。2018年にいたっては1軍出場なしに終わった。

崖っぷちとの見方もあったが、与田剛監督が就任して首脳陣が刷新した2019年に開幕スタメンを奪取。チームの捕手陣で最多の92試合に出場した。打率.228、盗塁阻止率.286と攻守で課題は出たものの、正捕手に最も近い存在に。強肩といえばソフトバンク・甲斐拓也や巨人・小林誠司らが真っ先に名前が挙がるが、関係者の中には加藤匠も甲乙つけがたいとの意見もあった。

2020年途中から木下拓の台頭許す

しかし2020年2月の春季キャンプで、風向きが変わるきっかけが起きる。オープン戦開幕となる阪神戦(北谷)でスタメンマスクを被ったが、3投手をリードして6失点を喫した。試合後、伊東勤ヘッドコーチは「任せた意味を感じていない。ワンプレーを引きずって、精神的に弱い。覇気がない」と強い剣幕で一蹴された。開幕スタメンはつかんだが、ベンチスタートが目立ち1軍29試合出場にとどまった。

対照的に、2020年は1学年先輩の木下拓が88試合に出場。沢村賞に輝いた大野雄大と最優秀バッテリー賞も獲得した。今季もその流れは変わっておらず、加藤匠は出場機会がないまま地元の東海地方を去ることになった。

チームの捕手陣を見ると、育成で今季加入した山下斐紹が6月に支配下登録。8年目の桂依央利とともに現在1軍は捕手3人体制を敷いている。ファームでは、大卒2年目の郡司裕也や高卒3年目の石橋康太ら若手が奮闘している中で、球団は29歳を迎えた加藤匠に新天地を用意した。

近年はトレードへの暗いイメージは薄れ、才能を“生殺し”しないための球団の温情も見え隠れする。さらに中日の外野陣は、主力の平田良介や新助っ人のマイク・ガーバーら続々とアテが外れる中で、トレードが成立した背景も容易に想像できる。加藤匠にとっては心機一転のチャンスであることは間違いなく、球界屈指の武器を携えてリーグを移る。(Full-Count編集部)

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