新潟県文化財保護連盟が石油の世界館友の会、三条市日本鶏保存会、子安延命地蔵尊世話人会を文化財保護の功労者として表彰

新潟県文化財保護連盟会長を務める、北方文化博物館の神田勝郎館長

新潟県文化財保護連盟は17日、北方文化博物館新潟分館(新潟市中央区)で県内の文化財保護功労者を表彰した。

県文化財保護連盟は1950年代、文化財保護法制定や県文化財保護条例が制定され、文化遺産を保護活用への機運が高まる中で結成した団体。同連盟では文化財に関する講演会や研究会、資料の整備を通した啓蒙活動を行うと同時に、文化財の保護及び活用に顕著な功績のあった個人と団体への表彰式を毎年開催している。

例年表彰式は「総会」という形で大々的に実施してきたが、今年度は新型コロナウイルス感染予防の観点から会場を新潟市と佐渡市の2箇所に分け、参加も受賞者のみを招待する形となった。なお、佐渡での表彰は10日、佐渡博物館で開催された。

石油の世界館友の会の須田公人幹事

石油の世界館

今年の受賞は、石油の世界館友の会(新潟市秋葉区)、三条市日本鶏保存会(新潟県三条市)、子安延命地蔵尊世話人会(新潟県五泉市)の3団体。いずれも、コロナ禍の影響で開催中止となった2020年から受賞が持ち越されていた。また、佐渡市では菅笠の技術伝承を行っている秋津菅笠技術保存会と、郷土資料の目録を30年に渡る期間製作し自費出版した北見継仁氏が受賞した。

石油の世界館は1988年に開館し、2020年10月にはサウジアラビア国営石油会社の寄付により設備が更新されるなど、現在も精力的に革新を続けている施設だ。また、隣接する「石油王の大邸宅」中野邸記念館は紅葉の名所としても有名である。

石油の世界館友の会は同施設を拠点とするボランティア団体。館内の展示や周辺の遺産のガイド活動のほか、ガイドブックの刊行などを通して石油文化の啓発に努めている。

三条市日本鶏保存会の岡村守会長

野生の鶏に極めて近い体型をした三条市の「芝地鶏」(三条市提供)

三条市日本鶏保存会は、定期的に品評会や雛の分譲、研修などを通して新潟県原産種の保存を行う団体。特に地元である旧・栄町で飼育されていた「芝地鶏」(野生の鶏に近い体型の地鶏で、江戸時代中期に金属加工の原料と共に北前船で出雲から伝わった種が地元の鶏と交配して産み出されたと考えられている)の飼育に関しては、会発足当時には僅か4羽が残るのみだったものを、現在約200羽ほどまで回復させる功績を上げている。

日本鶏保存会としては県内3番目に発足した団体であり、岡村守会長は「当初は三条市との合併前だったため、栄町日本鶏保存会として成立した。当時は会員のほとんどが中学生だったため、珍しがられてテレビ局にも取り上げられた」と当時を懐かしむ。

近年は会員の高齢化のほか、鳥インフルエンザの風評被害により小学校などでの飼育が中止されていることが活動に大きく響いている。そのため今後は、個人に大きく依存する形態でなく、行政などへ、拠点となる鶏舎を設置して周知と飼育の取り組みを広げていくよう呼びかけていくよう転換していくようだ。

子安延命地蔵尊世話人会の佐藤晃副会長(写真左)と今井光男会長(写真中央)

子安延命地蔵尊(五泉市提供)

子安延命地蔵尊は、江戸時代後期となる天保の初年、現在の五泉市へ一時滞在した行者が、修行を終わらせ帰ってきた際に建立したという石仏である。身の丈が2.88メートル、座台1.1メートルに及ぶ全国的にも珍しい巨体を誇る地蔵で、現在の加茂市の土倉山には材料となる石を掘り出したと伝えられる跡も残るという。

元は同市大川前地内に所在したが、1968年の道路工事により現在の場所に移転。世話人会は同年秋の遷座竣工の挙行と共に発足し、50年以上にわたり周辺の環境の整備を続けてきた。

文化財保護連盟を含めたいずれの団体も、現在は高齢化による会員の減少に頭を悩ませている。しかし、こうした先人の活動無くしては文化の断絶は免れ得ないことも事実であり、また彼らへ頼りきりになるのではなく、文化面でも持続可能な社会をつくることが今後社会の課題となるだろう。

表彰式が開催された北方文化博物館新潟分館

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