「不気味」なオリックス、V本命は? 飯田哲也氏が大混戦で再開のパ・リーグを読む

楽天・石井監督、オリックス・中嶋監督、ソフトバンク・工藤監督(左から)【写真:荒川祐史】

「ベテラン3人が白星を重ねるようになってくれば安泰」

プロ野球は交流戦が終わり、6月18日からリーグ戦が再開する。パ・リーグは、交流戦を9勝8敗1分で終えた楽天が、5勝9敗4分と振るわなかったソフトバンクを抜き、2ゲーム差をつけて首位に立った。東日本大震災から10年の今年、楽天がこのまま8年ぶりのリーグ優勝を飾るのか。現役時代にヤクルトで18年間、楽天でも2年間、名外野手として活躍した野球評論家・飯田哲也氏が分析した。

今年の楽天は開幕前から、ソフトバンクと並んで下馬評が高かった。飯田氏も楽天を優勝候補の本命に挙げた1人。その根拠となったのは、田中将、涌井、岸、則本昂に、ドラフト1位ルーキー・早川を加えた強力先発5本柱の存在だった。実際に開幕から3か月弱が経過し、早川はハーラートップの7勝(2敗)を挙げ、則本昂も5勝3敗、防御率3.28と安定している。

一方で8年ぶりに日本球界に復帰した田中将は2勝4敗と黒星が先行。防御率2.90、9試合で7度のクオリティスタート(6回以上自責点3以内)が示すように、投球内容は決して悪くないが、飯田氏が「試合はつくっているが、勝ち切れない。勝負を決めるような手痛い一発を浴びるケースが目立つ」と指摘する通り、被本塁打9は岸と並んでチームワースト。12日の阪神戦では、4回に大山の8号2ラン、6回に佐藤輝の16号ソロを被弾し敗れた。

涌井は6勝4敗、防御率3.94。開幕4連勝の好スタートを切ったが、5月以降はやや失速し、5失点以上の試合が増えている。岸は3勝4敗、防御率4.31の不振で、6月初旬には一度ローテから外れた。キャリアのある田中将、涌井、岸にとって不本意な状況で「ベテラン3人が白星を重ねるようになってくれば安泰でしょう」と飯田氏。“3人衆”の復活が優勝の鍵と見る。

飯田氏が「不気味」と見る交流戦優勝のオリックス

打線は、浅村と島内を軸に、鈴木大や岡島も好調。課題だった1番打者も、2年目の小深田が6月に入ってから月間打率.353と調子を上げ定着しつつある。

その中で飯田氏は「あとは右打者でしょう」と指摘する。もともと楽天打線の主力は、浅村以外は左打者ばかり。右の強打者として期待して獲得した新外国人2人もカスティーヨが4月24日の来日初打席でいきなり左脇腹を痛めて離脱。ディクソンも打率.143の不振で5月30日に抹消されたままで「横尾、田中、内田あたりに伸びてきてほしいところ。ディクソンも2軍で打席数を増やしていると聞いているので、彼がどれだけ打てるようになるか」と飯田氏は注目している。

追うソフトバンクは、千賀、グラシアル、周東、牧原大らが故障、セットアッパーのモイネロとデスパイネはキューバ代表として東京五輪米大陸予選に出場したことに伴う隔離期間のため、戦列を離れている。飯田氏は「シーズン後半にメンバーがそろった時の爆発力は半端ない。ソフトバンクは今が我慢のしどころ。首位と3ゲーム差以内で踏ん張っておかないと巻き返すのが難しくなる。逆に楽天は今のうちに逃げておきたい」と展開を読む。

さらに「不気味」と見るのが交流戦で優勝したオリックス。ソフトバンクとゲーム差なしの3位まで浮上し、山本、宮城、山岡、田嶋、山崎福ら先発投手陣が抜群。打線も首位打者争いでトップの吉田正を中心に、4年目の福田も1番打者として打率.337と好調だ。飯田氏は「これでロメロ、モヤら外国人まで打ち出したらヤバイ。優勝ですよ」と高く評価している。

最下位の日本ハムだけはやや引き離されているが、ロッテ、西武を含めてパ・リーグは大混戦。1位から5位までが4ゲーム差内にひしめいており、今後の展開からも目が離せない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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