東京五輪の抑えは山崎康晃の“一択” アテネ大会の守護神が栗林&平良を選ばないワケ

DeNA・山崎康晃【写真:荒川祐史】

2015、19年プレミア12を経験した山崎は今季、DeNAでセットアッパーを務める

東京五輪に臨む野球日本代表「侍ジャパン」の内定選手24人が16日に発表された。現役時代にロッテ、米大リーグ・インディアンスなどで日米通算234セーブを挙げ、2004年アテネ五輪で日本代表の守護神を務めた小林雅英氏(現社会人野球エイジェック投手総合コーチ)は、侍ジャパンのクローザーを、DeNAの山崎康晃投手が担ってほしいと語る。

内定メンバーのうち、21歳の西武・平良海馬投手は開幕から33試合連続無失点の日本記録を更新中。当初はセットアッパーだったが、5月末から抑えに固定されている。広島のドラフト1位ルーキー・栗林良吏投手も開幕から22試合連続無失点で新人記録を更新。6月13日のオリックス戦で初失点したものの、24試合登板で防御率0.37(17日現在)を誇っている。ただ、この2人はいずれも初めての侍ジャパントップチーム選出で、全国民注視の大舞台で実力を発揮できるかどうか、一抹の不安も残る。

一方、山崎は2018、19年にセ・リーグ最多セーブのタイトルを獲得。2015年と19年にはWBSCプレミア12で日の丸を背負った経験も。ところが昨年、防御率5.68、6セーブの大不振に陥った。今季は31試合登板、防御率2.08と復調しているが、開幕から抑えの座を三嶋に譲ったままだ。

稲葉篤紀監督は16日の会見で「(2019年の)プレミア12も抑えを1人には決めずに臨んだ。今回もギリギリまで決めず、打者によって、どの投手なら抑えられるかを考えていきたい」と語った。

しかし小林氏は「抑えをしっかり決めて、そこから中継ぎ、先発と逆算していく方が、試合のプランを組み立てやすいと思う」と見る。人選については「年齢的にも経験値的にも、山崎にしっかり最後を締めてほしい」と熱望。「山崎自身、最近悔しい思いをしている分、モチベーションを高く持てるはず。DeNAでは今セットアッパーを務めているが、抑えという役割を与えられた時点で、モチベーションがすごく上がり、高いパフォーマンスにつながっていくと思う」と分析する。

平良、栗林については「力がある2人。若さ、溌剌さを発揮してほしい。そのためにも、山崎が最後にいて、『山崎さんにつなごう』となった方が、いい流れができるのではないか」と語る。

ロッテなどで活躍した小林雅英氏【写真:荒川祐史】

横手投げの阪神・青柳は「おそらく長いイニングは想定されていない」

国際試合では、2009年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でのダルビッシュ有投手(現パドレス)、2015年第1回プレミア12での楽天・則本昂大投手のように、先発投手が急造で抑えを務めるケースがあるが、必ずしも好結果を残していない。

小林氏は「いくら力があるとしても、違う役割を務めてきた投手に簡単に務まるものではない」と強調。それだけに「長年専門職としてクローザーという役割を全うしてきた山崎に、こだわりと意地を見せてほしい」と熱くエールを送る。

横手投げの阪神・青柳晃洋投手の起用法にも小林氏は注目する。過去の国際大会で、元ロッテの渡辺俊介氏、現楽天の牧田和久投手、ソフトバンク・高橋礼投手ら、重宝された下手投げは数多い。

「初見では打ちにくい。相手も3打席目、4打席目となると、対応力のあるメンバーがそろっていると思うので、青柳投手に関してはおそらく、長いイニングを投げる想定はされていない」とした上で「本当に難しい場面で、右打者を抑えてほしい所で出てくるはず。ワンポイント的な起用もありうる」と予測する。今季阪神で先発を務めている青柳が、普段と違う役割に対応できるかどうかも鍵になりそうだ。

先発要員は代表経験豊富な楽天・田中将大投手、巨人・菅野智之投手、中日・大野雄大投手、先発・リリーフ両方で大車輪の働きが期待されるオリックス・山本由伸投手、2年目で伸び盛りの広島・森下暢仁投手とバランスが取れている。それだけに、リリーフ陣の奮闘と、起用する稲葉監督の手腕が注目される。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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