提言

 「無観客開催が最も感染拡大のリスクが低く、望ましい」「観客を入れるなら厳しい上限を設け、開催地の人に限るべき」「感染拡大の予兆があれば、無観客に切り換え、緊急事態宣言を含めた対策の実行を」▲厳しい注文が並んでいる、と理解していいのだろうか。新型コロナ対策の専門家有志が五輪・パラリンピックの開催形式などに関する提言を政府と大会組織委に提出した。対応が注目されるが▲提言の提出時期や細かな表現を巡って、政府関係者らとのせめぎ合いがあったらしい。開催自体の再検討を求める文言は削除されたそうだ。経過は昨日の紙面に詳しい▲政府の感染症対策分科会の尾身茂氏が6月の初め頃、提言について「プロフェッショナルの責任」と表現していた。そのプロの意地は示されたのだろうか▲あれこれと考える。ひょっとしたら「言うべきことはきちんと申し上げた」と後に言うための“アリバイ工作”かもしれない。専門家と政治の双方の顔を立てた「大人の事情」の産物と考えるべきかもしれない▲大谷翔平選手がオールスター戦の本塁打競争に参加すると決まった。「誰よりも遠くに飛ばせるように」とインスタで笑顔、直後の試合で2発。無条件な爽快感に感動して、もやもやが消えない五輪との落差にため息をついて。(智)


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