ベンチのフェンスをバーン!! 巨人・原監督 突如の「鬼神」モード突入は吉と出るか

サングラス着用でも怒りを隠しきれなかった巨人・原監督(右)

巨人は20日の首位阪神との直接対決(甲子園)をどうにか2―1で制し、6ゲーム差まで縮めた。カード勝ち越しをかけたこの日は、原辰徳監督(62)による執念の采配がズバズバと的中した一方で、珍しくベンチで感情を爆発させるシーンも。さまざまな手法を駆使して怒りを徹底的に制御してきた「勝負の鬼」が、逆転Vに向けて〝鬼神モード〟に突入し始めている。

勝負の一戦は鬼のタクトを振るいまくった〝原劇場〟と化した。まずは5回まで4安打無失点と好投した先発・高橋の交代だ。試合は5回まで0―0のこう着状態。打線も1安打に封じられた中、6回の先頭打者・北村が左前打で出塁すると、次打者だった高橋に代打を送り、一気に攻勢に転じた。代打の香月は凡退したたものの、一死一塁から松原が値千金の6号2ランを放ち、待望の先制点を奪取した。

さらに、継投でも〝奥の手〟を繰り出した。1点リードとなった7回二死二、三塁の場面で代打・北條に対してカウント2―2から投手を高梨から鍵谷にスイッチ。その鍵谷は1球で北條を空振り三振に仕留め、ピンチを切り抜けた。

まさに〝本気モード〟となった執念采配で猛虎に爪痕を残した原監督は「(カードの)初戦を取られたけれども、というところで決して悪いニュースではないですね」と冷静に語ったが、宮本投手チーフコーチは「あの場面、バッターは真っすぐに絞るしかないだろうし、鍵谷が切れのいいスライダーを投げてくれた。あのへんは『原マジック』ですよね」と脱帽するばかりだった。

長年の経験で培われた引き出しの多さとここぞの勝負勘。戦況を分析する頭脳が冷静さを失うことはなかったが、内面は「打倒・阪神」へ激烈に燃え上がっていた。

その一端が表面化したのは、高橋の代打で登場した香月一也内野手(25)が送りバントも失敗し、見逃し三振に倒れた直後だ。結果的に松原の一発で〝帳消し〟にはなったものの、好投手を下げたにも関わらず、バットが出ず、走者も進められなかった怒りが爆発したのか、原監督がベンチのフェンスを右手で「バーン!」と叩きつけたのだ。

勝利へのこだわりが人一倍強い原監督でも、自らの感情を行動に移すことは極めてマレ。中でも怒りをコントロールすることに関しては細心の注意を払い、アンガーマネジメントの一環として試合中のベンチでペンを走らせている。また、首脳陣の間では「監督がベンチで下を向いた時は怒りを抑えている時」とも認知されてきた。さらに、昨季からは「自分の尻を叩いた時もボルテージが上がった瞬間」(チームスタッフ)と、怒りを制御するバリエーションが増えたとされている。

いずれのパターンにしても、第3次政権下では怒りの感情を自分の中で収め、消化する傾向がいっそう強まっていた。それだけに、思わず手が出たことで、どれだけこの日の「1勝」にかけていたかが垣間見えるレアシーンだった。

「こういう接戦に次ぐ接戦の中で戦っていますので、接戦というものを我々は求めながらしっかり戦っていきたい」。猛虎追撃、リーグ3連覇へ〝鬼神〟と化した原監督の下、巨人がさらなる逆襲をかけていく。

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