【東京五輪】「中止」の選択肢も残すべき! ワクチンの〝弱点〟医療専門家が重大指摘

有観客開催が決定したが…

これで万全と言えるのか…。東京五輪・パラリンピック組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)、日本政府、東京都、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表らによる「5者協議」(21日)で、東京五輪の観客数上限を会場定員の50%以内、最大1万人とすることを正式決定し、またまた波紋を広げている。組織委の橋本聖子会長(56)は判で押したように開催に意欲を見せたが、医療の専門家は“抜け穴”の存在を重大指摘。開幕までに選手の感染者が増加した場合は「中止」の判断を下す必要があるとの考えを示した。

かねて政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会・尾身茂会長(72)は開催方式について「無観客が望ましい」と語っていたが、組織委など主催者サイドは有観客での開催を決断。橋本会長は「多くの方の協力があって、医療体制に支障のないというところまで来ている。ワクチン接種も進んでいるので、現在のところ極力、医療に支障をきたさないところまで体制は整ってきた」と安全性を強調した。

しかし、すでに海外では“頼みの綱”であるワクチンが完璧ではないことが浮き彫りになっている。全米陸上競技連盟の東京五輪予選では、ワクチンを接種した選手と関係者の2人がコロナに感染したことが報じられた。

ナビタスクリニックの理事長で感染症に詳しい久住英二医師は「ワクチンで感染を100%防ぐことはできない。これからインド株が増えてくると、米ファイザー社のワクチンを2回打ち終わってから2週間以上たっている方でも、感染予防効果は約79%(通常は約95%)というデータがスコットランドから出ている。ちなみに、英アストラゼネカ社のワクチンは約60%(同約76%)。例えば英国やEU(欧州連合)から来たアスリートが英アストラゼネカ社のワクチンを打っている場合は、感染者がそれなりに交ざってくる可能性が高い」と重大指摘した。

つまり、ワクチンを接種済みでも一定の感染リスクがあるということ。実際、ワクチンを打った上で19日に日本へ来日したウガンダ選手団計9人のうち、1人がPCR検査で陽性判定を受けた。ところが、当該選手を除く選手団は20日未明に夜行の貸し切りバスを使って、事前合宿地の大阪・泉佐野市に向けて出発した。この対応には各方面から疑問の声が噴出している。

久住医師も「陰性だった8人も今後いろいろな検査で陽性になってくる可能性はある。本来であれば濃厚接触と考えて隔離した方がいいので、今後もモニタリングしていくべき」と話す。その上で「今のルールを絶対に変えられないわけではないと思う。無観客にするしないとかじゃなくて、来日した各選手団に必ず複数人の感染者がいるような状態であるとするならば『やっぱり五輪をやめる』という選択もありだと思う」。開幕まで残り1か月の状況でも「中止」の選択肢を残すことを提言した。それだけ、東京五輪において感染拡大の危険度が高まっているということだろう。

橋本会長らは、依然として「安心・安全」な大会運営をアピールしているが、まだまだ課題は山積している。本当にこのままで大丈夫なのだろうか。フタを開けてみれば…では済まされない問題だ。

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