【調剤報酬改定2022】どうなるフォローアップの評価/日本保険薬局協会の調査報告書を読み解く

【2021.06.24配信】日本保険薬局協会(NPhA=エヌファ)は6月、次期調剤報酬改定への要望事項を公表している。「調剤基本料」の格差是正などを求めているが、その中にはフォローアップへの評価要望もある。フォローアップに関しては、その成果に関する詳細な調査報告書も作成している。本稿ではその調査結果の詳細とともに、フォローアップ評価への方向性を考察する。

フォローアップで「処方変更」54%

日本保険薬局協会がまとめた「2022 年度診療報酬改定等に関する要望書 ~真に国民の健康な生活に貢献できる薬局になるために~」の中で、フォローアップに関わる事項は、以下のように記述されている。

“■患者及び服用薬剤の特性に応じた、継続的な薬学管理による成果に対する評価
調剤後薬剤管理指導加算が新設されたところであるが、対象薬局が地域支援体制加算を届け出ている薬局とされており、また、対象薬剤も限定的である。薬剤師の薬学的知見に基づいた判断により、個々の患者に最適な薬剤使用期間中のフォローアップを行うことは、患者の薬物治療に幅広く貢献していくものであるため、対象薬局や薬剤を限定することなく、その成果が適切に評価されるよう要望する。”

端的にいうと、全ての薬局で、幅広い薬剤に関して、フォローアップの業務を評価すべきということだ。

その評価へのエビデンスとして、日本保険薬局協会では、フォローアップの現状と成果に関して、調査報告書をまとめている。

会員企業20社から報告された525事例を分析したもの。

結果では、フォローアップによって何らかの成果につながった事例は95%で、フォローアップの高い有用性が裏付けされている。

「成果」とするのは、具体的には「処方変更」が54%(268件)。
そのうち、副作用の発現による中止や減少が126件。
薬剤中止、減量、残薬調整による医療費削減効果は1カ月処方換算で109万円と算出された。
処方追加や増量が47件。
服薬状況の改善等のための変更が36件だった。

また、「処方変更以外の成果」も69%(342件)あった。
うち、副作用の発見・確認が174件。
服薬状況の確認152件、体調確認が76件。
服薬に関する再指導は31件。
かかりつけ薬剤師の新規契約19件。
「薬物治療に対する不安、フォローアップされたことの安心感から患者様、医療機関より多くのお礼の言葉があった」事例も125件あった。

患者聞き取りによる薬剤師による評価では、フォローアップ後に服薬状況、体調、副作用に改善がみられたのが434件、83%。

処方変更された薬剤では血圧降下剤が最多も、幅広い

処方変更された薬剤では、血圧降下剤が24件で最多だが、下剤・浣腸剤22件、神経障害性疼痛の治療薬等を中心に中枢神経系薬剤20件、鎮痛・鎮痒、収斂、消炎剤14件、その他、47薬効分類にまたがっている。薬効を問わず、フォローアップの成果がある。

具体的に、どういったケースがあったのかについても、事例を挙げている。

例えば、70代女性で服薬状況に問題があったケース。
疼痛治療剤の増量があったこともあり、電話でフォローアップをしたところ、増量後、日常生活に支障が出るほどの眠気があり、自己判断で服用を中止していることがわかった。相談を受け、副作用発現の可能性とそれによるコンプライアンス低下についてトレーシングレポートを提出。その後、当該薬剤は減量となった。

服薬状況には問題はないが体調に問題が生じた60代女性のケース。降圧剤を2種類服用しており、血圧90〜110で、ふらつきが生じていると相談を受けたため、1種類を中止するように指導し、すぐに処方医に指導内容に関して承諾を得た。その6日後に経過を確認したところ、血圧100〜120で推移しており、めまいやふらつき等の自覚症状も出ていないことを確認した。

来局時の服薬指導内容の実践を確認した70代男性のケース。
抗がん剤(キナーゼ阻害剤)を服用中で、来局時に「11時半ごろに服用している」「下痢の副作用がある」ことを聴取。食事の影響を受け、血中濃度が上がる可能性がある薬剤のため、朝食、昼食と1時間以上は時間を空けて服用するよう再指導を行った。その後、電話にて指導内容が実践されているか、フォローアップ。「1時間以上時間を空けて服用するようにしたところ下痢が改善された」ことを聴取した。

治療・処方作成へのサイクルに持続的に関わることで治療効果の最大化と医療費抑制に貢献

協会では、本調査で得られた結果に関して、治療効果の向上に貢献しているとしている。
「日常生活の中での薬物治療の経過をフォローアップをすることによって得られた情報を処方医をはじめ、多職種に情報提供することで、処方変更や、患者のアドヒアランス向上、治療経過の改善に、間接的(内容によっては直接的)に繋がっており、治療効果の最大化及び医療費抑制に貢献しているということを示唆している」と分析している。

また、患者やその家族からの薬剤師の職能理解につながっているとする。
「患者やその家族、連携先の医療従事者から多くのお礼の言葉をいただき、かかりつけ 薬剤師として新たに指名される事例も見受けられたことから、薬局の機能や薬剤師の職能を 患者に理解、実感していただく機会にもなっていると考えます。そして、これらの成果を広く共 有をし、薬局薬剤師の基本的な業務として浸透していくよう努めていきたいと考えます」と述べている。

フォローアップの内容は患者背景によって、実に多岐にわたることから、今後、より幅広い調査実施も必要としている。

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<編集部コメント>
同調査結果をみると、いかにフォローアップが薬剤師の職能の理解につながるかがよく分かる。
フォローアップの実施は、これから議論が本格化する“反復利用処方箋”の実施においても、医療関係者からの理解を得る説得材料にもつながるのではないだろうか。薬剤師が患者の変化を確認し、医師にフィードバックする体制が取れていることの一例でもあるからだ。

また、同調査報告の優れている点は、フォローアップのサイクルに持続的に関わることによるイメージ像を提示していることだ。
治療・処方から、フォローアップによって薬物治療におけるアドヒアランス向上や副作用の早期発見、ポリファーマシー解消、残薬調整などを行うことで、処方に変化が生まれ、そこからさらにフォローアップを行う。その繰り返しにより、治療効果の向上に寄与するほか、重症化予防や合併症の予防、再入院の削減にもつながり医療費抑制効果も高いことを指摘している。
点や一面的な効果考察にとどまらず、社会的な意義も強調している。

一方で、疑問はどれぐらいの薬局が実際にフォローアップを行っているかで、ここは不透明である。
協会の調査も「525事例」の考察から始まっており、フォローアップが全体でどの程度行われているのかは浮かび上がってこない。
この点に関して、調査をまとめた日本保険薬局協会 医療制度検討委員会の石井僚氏は、「実施率についてはどのような質問を設定するかの難しさもある」として、今後の調査実施の課題の1つとしている。

実施率が今ひとつ浮かび上がってこない背景には、フォローアップを浸透・定着させるまでには、IT化などの業務の整理、効率化を並行して行わなければいけない点があるのではないだろうか。
現状の業務にフォローアップを付加していくことの難しさを指摘する声も少なからずある。

「薬剤師でなければできない業務」へのシフトが指摘される中、フォローアップは、間違いなく薬剤師が重点化すべき業務になっていくだろう。

出典:日本保険薬局協会資料。同協会は、2020年1月に「地域医療における継続的な 薬学的管理イメージ」を作成していた

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