オリンピック開催直前の2021年7月、コロナ禍の東京、物流崩壊の危機! 現実とシンクロする傑作サスペンス『東京ホロウアウト』緊急文庫化!

単行本刊行時「予言の書」として話題になった傑作サスペンス『東京ホロウアウト』(福田和代 著)が、コロナ禍の現実を反映するなど大幅改稿を経て、緊急文庫化。 2020年3月の単行本刊行時、 テロによって引き起こされた物流崩壊の危機に立ち向かう人々を描いた本作は、 「コロナ禍の影響で、 マスクやトイレットペーパー、 食料の買い占めなどで混乱に陥っている人々と、 それを解消するため奔走するドライバーやメーカーといった物流関係者の様子が、 現実とシンクロしている」と、 『朝日新聞』や『日経新聞』、 『週刊文春』などで取り上げられ、 「予言の書」として反響を呼んだ。 それから約1年半経った2021年6月の現在でも、 未だ現実はコロナ禍で混沌としている。 そんな状況でも、 「『困難に対し、 己の仕事をまっとうすることで立ち向かう人々の物語』を届けることで、 励みにしていただけたら」という思いから、 同月に緊急の文庫版刊行を決定したとのこと。文庫化にあたり、 舞台を2020年から2021年に変更。 コロナ禍の情勢を踏まえた大幅改稿となっている。

物流を絶たれた時の首都の脆さ、 日常が危機に陥って初めて分かる流通の凄さ

オリンピック開催が間近に迫る東京で発生した、 物流を狙ったテロ。 まず配送トラックを狙った青酸ガステロ事件が起こり、 さらに鉄道が爆破され、 高速道路でのトンネル火災も発生。 その結果、 交通が分断され、 食料品は届かず、 都心に向かう物流がせき止められてしまう。 後手に回る政治家の対応、 情報に不安に煽られる人々――。 物流が遮断された時の東京の脆さや、 モノがなく混乱に陥る人々を見事に描き切った本作は、 パニックサスペンスとして一級品でありつつ、 物流業界や東京という大都市が抱える問題も鋭く描いている。著者が緻密な取材を元に描いた流通の裏側はこれまであまり知られていない事実も多く、 私たちが当たり前に過ごせる日常生活が、 どれだけ様々なプロの仕事の上に成り立っているのかと、 改めて気づかされるだろう。

運送会社から「社員や運送業界に広めたい」という反響も

物流問題を扱うと共に、 長距離トラックドライバーの活躍を描いている本作は、 物流業界からの反響もあったそうだ。 ある運送会社会長からは「この作品は我々物流に携わる者も読むべき作品」として、 社員や業界内に配布するためにまとめて購入された。 他にも「今直面している問題をリアルに描いている」など称賛の声が上がっていた。主人公である、 長距離トラックドライバー・世良たちの「陸の孤島と化した東京を助けたい」という奮闘や、 仕事にかける想いの熱さは確実に多くの読者の共感を得ている。

困難に立ち向かう“市井の人々”の姿に勇気

物語の中で事態を覆すべく奮闘するのは、 長距離トラックドライバー以外にも、 スーパーの店員、 主婦といった市井の人たちがいる。 自分たちの仕事に誇りを持ち、 かつまっとうすることで困難に立ち向かう、 “名もなきプロ”である彼らの生き様に勇気が湧くことだろう。 困難な状況が続く、 今まさに読んで欲しい傑作小説だ。 福田和代による本作への真摯な想いを綴ったあとがきや、 大矢博子さんによる詳細な解説も見逃せない。福田和代『東京ホロウアウト【文庫版】』あとがきはこちらのサイトで公開中。

© 有限会社ルーフトップ