フル稼働ならずも… 巨人・菅野の揺るがぬ“エース特権”に寄せられる「ミョーな視線」

圧倒的な結果が見たい

エースの完全復活はいつか――。巨人は25日からリーグ2位のヤクルトとの3連戦(神宮)に臨む。4連勝中の勢いで首位阪神を追走するライバルを一気に蹴落としたいところだ。そんな中、なかなかフル稼働とならないのが菅野智之投手(31)で、現在は今季3度目の抹消中。原辰徳監督(62)は今のところ我慢を続けているが、他球団からは〝エースの特権〟を巡るチーム内のパワーバランスに注目が集まっている。

阪神との直接対決を2勝1敗で勝ち越し、DeNAとの北陸シリーズも2連勝。攻守で躍動する松原がリードオフマンに定着し始め、3番の丸は5戦4発と絶好調だ。米球界から巨人に復帰した山口も白星スタートを切り、故障者が続出する中でも現有戦力が奮闘を続けている。

その一方で開幕から波に乗れないのが菅野だ。防御率こそ2・72ながら2勝4敗で登板は8試合にとどまっている。5月上旬からは「右ヒジの違和感」で約1か月離脱。今月6日に戦列復帰したが、登板した2試合とも本調子には程遠く、再び抹消となった。

先発陣の兼ね合いもあり、菅野が最短で復帰する公算が高いのはヤクルト戦の3戦目。原監督は24日に「あるとしたら日曜日(30日)でしょうね」としつつ「あんまり…流れの中でね。アテにというか、義務的な部分で(投げ)させない方がいいよ」と慎重な姿勢ものぞかせた。

本来であればチームの大黒柱で、首脳陣としては最も計算が立つ投手であるはず。起用する側の指揮官としては、もどかしさを募らせていることは想像に難くない。加えて菅野の状態については「本人にしか分からない」。登板してもらおうと思っても、本人のゴーサインが出ない限りは手の打ちようがないのが実情だ。

そんな状況に、他球団からはエースだからこそ認められている〝特権〟を巨人がどう扱っていくのかに関心が寄せられている。セ球団関係者は「実績が十分な投手だから、本人の意思がある程度反映されることは分かる」としながら「代わりに投げなければいけなくなる選手の気持ちもある。監督やコーチ陣が決める方がチームの形としては自然。その方が、本人も余計な責任を背負わずに済むかもしれない」と語った。

菅野が最後に登板したのは13日のロッテ戦(ZOZOマリン)。首脳陣が抹消の措置を取ったのは、その3日後で原監督は「(再調整をするため)本人がそういう選択をした」と説明していた。この時、チームではすでに阪神との首位対決3戦目(20日=甲子園)の先発が予定されていたが、最終的に左腕の高橋が調整期間を縮めて登板した。

もちろん、首脳陣が強引に登板させて故障させては元も子もないが、イニシアチブの一部が選手である菅野側にある感は否めない。

ただ、原監督は本人の意向を尊重していく構え。「監督から『投げなさい』とは言えないものか?」と問われると「言えない、言えない」と首を横に振った。いかにチーム内の力関係を保っていくのか。足踏み状態が続く菅野はここから圧倒的な結果を残し、周囲から寄せられる妙な視線を一掃できるのか。

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