太陽圏の3D地図を実際の観測に基づいて作成することに初めて成功

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アメリカのロスアラモス国立研究所は6月11日、ロスアラモス国立研究所のダン・ライゼンフェルドさん率いる研究チームが、太陽圏の3D地図を実際の観測に基づいて作成することに成功したと発表しました。実際の観測に基づいて太陽圏の3D地図が作成されたのはこれが初めてとなります。

■太陽圏とは?

太陽圏 (heliosphere) とは太陽風が到達する範囲をいいます。

太陽風は、星間物質と衝突すると、終端衝撃波(termination shock)を発生させつつ、星間物質と交じり合いながらさらに進み、最終的には星間物質と完全に交じり合います。この太陽風が星間物質と完全に混じり合う境界をヘリオポーズ(heliopause)、ヘリオポーズと終端衝撃波の間の領域をヘリオシース(heliosheath)といいます。

太陽圏と星間空間の境界はヘリオポーズということになります。

このような太陽圏の境界について、これまで物理モデルを使って理論的に追及されてきましたが、実際の観測に基づいて3D地図が作成されたのはこれが初めてとなります。

■どのようにして太陽圏の3D地図を作成したの?

【▲ 今回作成された太陽圏の3D地図。(Image Credit:Los Alamos National Laboratory)】

研究チームによれば、今回研究チームが取った方法はコウモリが周囲の状況を知る方法とよく似ているといいます。コウモリは超音波を出し、跳ね返ってきた超音波から、周囲の状況を知ります。

このような超音波にあたる太陽風が星間物質と衝突すると、高エネルギー中性原子の流れが返ってきます。この高エネルギー中性原子の流れは太陽風が観測されてから2~6年ほどで返ってきますが、この高エネルギー中性原子の流れが返ってくるまでにかかった時間から、高エネルギー中性原子の流れが発生した領域までの距離が解るというわけです。ちなみに、高エネルギー中性原子の流れの強弱のバターンは、それを発生させた太陽風の強弱のパターンと同じなので、どの太陽風が返ってきたのか解ります。

研究チームは、NASAのIBEX(Interstellar Boundary Explorer)衛星の2009年から2019年を通しての完全な1太陽周期に相当する高エネルギー中性原子の観測データを使って、今回の太陽圏の3D地図を作成することに成功しました。

今回の3D地図によれば、太陽は天の川銀河のなかを公転していますが、その進行方向に向かって、太陽圏の広がりは、120AUほど(1AU=太陽と地球の平均距離)、その反対方向には、少なくとも350AUほどになります。太陽圏は後方に吹き流されたような形になっています。

研究チームによれば、今回の研究成果によって、太陽と星間物質の相互作用について、よりよく理解することができるようになるだろうとしています。

Image Credit: NASA/Goddard/Walt Feimer/Los Alamos National Laboratory
Source: ロスアラモス国立研究所論文
文/飯銅重幸

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