継承へ動画発信強化 写真解説は10万再生 長崎平和推進協会 

再生回数が10万回を突破した動画「原爆写真を語る」の一場面

 新型コロナの影響で被爆地長崎の継承活動も対面での取り組みなどが制限される中、長崎市の長崎平和推進協会は動画投稿サイト「ユーチューブ」など、会員制交流サイト(SNS)を活用して発信力を強化している。原爆投下直後の被害の写真を解説する動画は再生回数が10万回を突破。コロナ禍を契機に、「新しい伝え方」で被爆の実相を内外に広げたい考えだ。

■ 巣ごもりに対応
 修学旅行生や団体などに語り部の被爆者を派遣する同協会の「被爆体験講話」は、昨年4月から7月末まで中止。例年、県内外で年間約1200件実施していたが、昨年度は495件と半数以下だった。
 そこで同協会は、来崎できない人に向けて原爆の実相や平和の尊さを発信しようと、昨年4月からSNSなどの活用を始めた。同月に写真共有アプリ「インスタグラム」の公式アカウント、6月にユーチューブ公式チャンネルを開設。コロナ禍で「ステイホーム」が提唱される中、SNSを駆使して巣ごもり需要への対応を図った。

■ コロナ禍が契機
 ユーチューブではこれまで約20本の動画を投稿。中でも、同協会の写真資料調査部会の松田斉部会長が、県外原爆展の写真を一枚ずつ解説する「原爆写真を語る」は再生回数が10万回を超えた。
 爆心地から約2キロ離れた長崎市住吉地区付近の住宅の縁側で少年が亡くなっている様子をとらえた写真について、松田部会長は、空き家に「(被爆して)避難中の人が休憩するために入り込み、そのまま亡くなってしまった例がたくさんあった」と説明を加えている。
 長崎の被爆遺構や慰霊碑の写真、所在地を1冊にまとめた「長崎の原爆遺跡・慰霊碑 ウォークマップ」(4月発行)の関連動画も9日から公開している。分かりにくい場所にある慰霊碑への道案内をする内容。投稿動画の再生回数は、数十回のものから10万回超までと開きがあるが、今後より注目されるよう工夫していくという。
 同協会の中川正仁事務局長は、コロナ禍が「長崎を訪れることができない人にも、平和や被爆の実相を伝えられる機会になった」と振り返る。「SNSなどを活用して、これまで以上に被爆の実相を伝えていく」と力を込めた。

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