“し泡せ”届ける「シャボン玉オヤジ」 病院などで活動

園児の前でパフォーマンスをするシャボン玉オヤジさん=川崎市高津区

 コロナ禍でうつむきがちな子どもや医療従事者に元気を届けようと、シャボン玉のパフォーマンスを続ける男性がいる。川崎市内外を訪ね歩き、“し泡せ”を届けるシャボン玉オヤジ(本名非公表)さん。子どもも大人も笑顔にさせる“七つ道具”を手に、「依頼がある限り続けていきたい」と意欲を見せている。

 梅雨の晴れ間、にじのそら溝の口保育園(同市高津区)の屋上に男性の姿があった。2本の釣りざおに付けたプラスチック製のチェーンを洗剤液に浸し、大小さまざまなシャボン玉を空に飛ばすと、園児たちから大きな歓声が上がった。

 「し泡せ(しあわせ)届け隊」と銘打った活動の一環。コロナ感染症対応の最前線で奮闘を続ける医療機関や介護施設、運動会や遠足などの行事が中止となった幼稚園や小学校などを訪ね、無償でパフォーマンスを披露している。

 男性は同市多摩区で生まれ育ち、本業はフリーのグラフィックデザイナー。活動を始めたきっかけは10年ほど前、「シャボン玉名人」との出会いだった。東京・代々木公園でその妙技に引き込まれ、名人に教えを請うた。かねてキャンプなどを趣味としてきたアウトドア派で、「自分でもできるのではないか、と思った」と振り返る。

 週末になると地元の生田緑地や多摩川対岸の二子玉川公園(東京都世田谷区)に足を延ばすが、行き先は「その日の風で変えるので神出鬼没」と笑う。本業の合間に月1度のペースで活動を続け、知人らから依頼を受けて医療機関の屋上などでもシャボン玉を飛ばしてきた。

 昨年末にはコロナ禍で差別を受ける医療従事者の話に胸を痛め、「病院で感謝のシャボン玉を飛ばしたい」とフェイスブック(FB)で発信。3密を避けるため「屋外なら迷惑にならないだろう」と考え、企画を練った。以前訪れた老人ホームでは、車いすの入所者が立ち上がって喜んでくれたり、歩行器を使う女性が近寄ってお礼を伝えてくれたりした。

 「自分が楽しんでいるのに、周りの人にも楽しんでもらえる」。活動を続けているうちに新たなつながりも生まれ、シャボン玉と笑い声がはじける明日を願い続ける。

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