世代超えて愛された店 創業53年「レストラン松新」閉店へ

閉店する松新の山田社長(左から2人目)ら=諫早市

 長崎県諫早市多良見町で1968年7月に創業し、ファミリーレストランの草分け的存在として世代を超えて愛されてきた「びーふ天国 レストラン松新」が、店舗の老朽化などのため7月末で53年の歴史に幕を下ろす。新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ち込んだことが追い打ちになった。閉店を知った利用客らからは「地元で『洋食といえば松新』というぐらいの存在だった」などと惜しむ声が相次いでいる。
 初代社長の父親で、佐世保市で精肉販売業を営んでいた松尾新市さん=故人=が店名の由来。創業当初は1階がレストラン、2階が宿泊施設のドライブインだった。幹線道路拡幅に伴い、創業から5年後に隣接地に移転。現在の肉料理専門のファミレスになった。
 創業時から提供している名物の「牛めし」、手ごねの「松新ハンバーグ」、「長崎県産牛サーロインステーキ」などが特に人気。おいしさを追求し、ソースから手作りにこだわってきた。家族で気軽に利用してもらえる店づくりを目指し、約40年前にはバイキング形式のサラダバーをいち早く採用。「びーふ天国、まーつーしん」のCMソングでもおなじみとなり、座席数100席の店内はコロナ禍前の近年、土日ともなると1日450人ほどの客でにぎわった。
 しかし、約半世紀が経過し、店舗が老朽化。建て替えには多額の投資が必要となる中、コロナ禍が追い打ちをかけた。一時は月の売り上げが例年の半分程度まで激減。4代目の山田国子社長(59)の後継者もおらず、今年に入って間もなくのれんを下ろすことを決断したという。
 6月半ばにホームページなどで閉店を知らせた。反響は予想もしないものだった。会員制交流サイト(SNS)でも拡散され、「悲しみに暮れています」「長崎の食文化の崩壊」などと惜しむ声が続出。「信じられない」と問い合わせの電話も相次いでいる。家族で利用してきたという男性(50)は「CMソングのフレーズが耳に残っている。アットホームな雰囲気の店。一つの時代が終わった感じで寂しい」と話す。
 閉店の知らせ以降、懐かしの味を求める来店客で料理の仕込みが間に合わず、営業時間を変更するなどして対応している。料理長の松井進専務(60)は「たくさんのお客さんに支えられてきた。最後の日まで今まで通りの味でお客さんを迎えたい」と感慨深げ。山田社長は「静かに閉店しようと思っていたが、これほど反響があるとは思わなかった。皆さんには感謝です」と目を潤ませた。
 7月は毎週火曜日定休。同店(電0957.43.0351)。

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