不正検査

 19世紀、英国の首相だったベンジャミン・ディズレーリの言葉だという。〈うそには3種類ある。ただのうそ、途方もないうそ、そして統計〉。作家の晴山陽一さんが名言を集めた「すごい言葉」(文春新書)にある▲世の中、軽いうそも大うそもある。統計がうそだというのは、統計とはそれを出す側の都合がいいように曲げられがちだ、という意味だろう▲もう一つ、製品の「検査」にうそが混じれば、造る側の信用は傷だらけになる。三菱電機が長崎製作所(時津町)で製造している鉄道車両向け空調機器で、不正な検査が発覚した▲発注した側が指定する検査をせずに、実在しない検査データを用いる。架空のデータを自動的につくるプログラムまである。顧客の指定は「そっちのけ」と言うほかない。検査も時に、都合よく曲げられる▲長崎製作所で働き、肩を落とす人は数多いだろう。きのうの紙面で「誇りと自信を持って製品をつくってきたのに」とOBが歯がみしていた▲名言集からゲーテの言葉を。〈人生は次の二つから成り立っている。したいけれど、できない。できるけれど、したくない〉。人はやれること、すべきことを避けがちだと皮肉っている。長年の不正を自ら解き明かし、取り除く。「できるけれど、したくない」ではもう済まされない。(徹)

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