「平和が欲しい」思い揺るがず 祈念式典被爆者代表 岡信子さん

「平和への誓い」を述べる被爆者代表に決まり、記者会見で体験や思いを語る岡さん=長崎市役所

 今年の平和祈念式典で最高齢の被爆者代表として「平和への誓い」を述べる岡信子さん(92)=長崎市住吉町=は2日の記者会見で、大けがを負いつつ救護に従事した壮絶な経験を振り返った。「平和が欲しい。核のない世界にしたい。もう私たちのような、あんな苦しいことを、後の人たちにはさせたくない」。核兵器廃絶への思いは九十路(ここのそじ)を過ぎても揺るがない。
 被爆直後に動員された救護所は、負傷者の傷口にうじ虫がわき、悪臭が漂っていた。苦しみに耐えかねて上階から飛び降りた人もいた。「衛生兵が『戦場でも見たことがない』と言った。その言葉のままだと思った」
 数年前まで「思い出したくない」と体験をほとんど話してこなかった。それでも報道機関の取材に応じるなどして「元気なうちに伝えておきたい」との思いが募り、依頼を受けた大学などでも語るようになった。平和祈念式典の被爆者スピーチには初めて応募。自分が選ばれたと聞いた時は「言葉よりも涙が出るのが先だった。うれしかった」という。
 今年1月に発効した核兵器禁止条約について記者に見解を問われると、「発効されたけれど、第一歩にすぎない。(核保有国に対し)核をなくすということを、どう考えているのか問いたい」と厳しい表情で語った。さらに「残された者の務めとして、核をなくすため、最後まで訴えていきたい」と決意の言葉をつないだ。


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