都議選2021「若者の声は政治に届かない?」という3つの誤解

東京都議会議員選挙は7月4日に投開票日を迎えます。

東京オリンピック・パラリンピックや新型コロナウイルスをめぐる報道を見て、都政に興味を持たれた方もいるのではないでしょうか。 でも、いざ、投票しようと思っても、「自分が投票したからって、何が変わるの。やっぱりやめておこう」と思われる方もいるかもしれません。せっかくの貴重な思いを無下にしてしまうことないように、特に若い世代の有権者の投票参加を阻む3つの事実と異なる思い込みを紹介します。

誤解1 少子高齢化が進む中では、若い世代の意見は政治に反映することができない

若者の政治参加を考えたときに、「少子高齢化の進行で有権者に占める高齢者(シルバー)の割合が増し、高齢者層の政治への影響力が増大する現象(知恵蔵mini。コトバンクより)」である「シルバー民主主義(デモクラシー)」が課題としてしばしば取り上げられます。

東京都議会議員選挙の投票権を持つ10代・20代の方のなかにも「だから私が投票に行っても仕方がない」と思われている方はいないでしょうか。

もし、あなたがそう思っていたとしたら、それは誤解した正しくない東京の姿です。

図表1 年齢別推定有権者数

今年1月の年齢別人口から東京都議会議員選挙での有権者数を推計し、人数の多い順番に並べてみます。もっとも人数が多いのは40代有権者で、次いで50代有権者、30代有権者、10代・20代有権者の順番となっていることがわかります。60代以上の有権者は10代・20代や30代といった世代よりも少ない状況です。

一方、前回の都議会議員選挙の投票結果から、実際に投票した人を推計してみると、60代や70代の方が10代・20代や30代よりも多くなります。

東京都でシルバー民主主義(デモクラシー)が発生しているとしたら、それは少子高齢化によるものではなく、若い人が高齢者世代よりも投票に行かないことで生じている現象となります。

もちろん、仕事や自己研さんに余暇の活動、ご家庭でのご予定と、なにかと忙しい若い世代の人にとって投票に行くためのコストが高いという状況もあるかと思います。では、実際に投票にかかるコストはどの程度でしょうか。

誤解2 投票所に行ってくるのって、何時間もかかるんでしょ?投票するのって、とても大変

明るい選挙推進協会が国政選挙や統一地方選挙において実施している意識調査では、「自宅から投票所まで10分未満で移動できる人」が8割程度を占めています。

図表2 自宅から投票所までの所要時間

「まちなかで投票所を見かけないけど、本当?」

そう思われた方はいませんか。身近な施設と比較してみましょう。

都議会議員選挙では1,868か所の投票所が設置される予定です。

これは東京都内のコンビニエンスストアのなかで3番目に多いローソン(1,692店舗。2021年2月末時点)を超える数になります。

また、新型コロナウイルス対策のために期日前投票も推奨されています。

都議会議員選挙で設置される期日前投票所の数は308か所が予定されています。こちらも身近な施設と比較してみると、東京都内のマクドナルドの店舗数(約350店舗)などが近しいものとなります。ちなみに、都内で2番目に店舗数の多いハンバーガーチェーンはモスバーガーですが、店舗数は172店舗と、期日前投票所の方が100か所以上多く設置されることがわかります。

投票所は、コンビニエンスストアやファーストフード店と違い、大きく目につく外観の装飾をしているわけではないため(建物の入り口に白黒の立て看板を出す程度)、目につきにくいのかもしれません。

まれに台風などの悪天候が重なった時に投票のための列ができることがありますが、通常、投票所では5分もかからずに受付から投票まで終えることができます。加えて、自宅に郵送される投票権を持参しなかったとしても、会場で身分証明を行うことができれば投票することができますし、係員の方に依頼をすると選挙公報を閲覧させてもらうこともできます。 思い立ったらすぐ投票できるかもしれません。投票所の場所は選挙ドットコムや選挙管理員会のHPなどで参照できますので、ぜひ一度調べてみてください。

でも、「いくら投票に行く負担が少ないと言われても、投票してもなにも変わらないんだったら投票する必要もないよね」と思われる方もいるのではないでしょうか。

誤解3 当選するのには何万票も必要でしょ。私一人が投票しても選挙結果はなにも変わらないはず

たしかに、何度選挙を繰り返しても同じ方が当選し続けていると、「私が投票してもしなくても何の影響もないだろう」と思ってしまうかもしれませんね。

実は、都議会議員選挙は、毎回大きな変化が生じています。

当選した議員の顔ぶれをみてみましょう。前回の都議会議員選挙では当選した127人のうち54人、43%が新人候補者でした。また、前々回やその前はそれぞれ34人、26.8%が新人候補者と、都議会議員選挙は毎回多くの新人候補者が当選し、東京都の行方を変えていく可能性のある選挙になっています。

また、議会の第一党となる政党も、自民党(2005年)、民主党(2009年)、自民党(2013年)、都民ファーストの会(2017年)と、ここしばらくは選挙のたびに入れ替わっています。

加えて、接戦の選挙区が多いのも特徴です。

図表3 接戦の選挙区

都議会議員選挙では42の選挙区がありますが、「最下位当選者の得票数」と「落選者の中で最も多くの票を得た人の得票数」を比べた時に、その差が500票以下の選挙区が5つあり、501票から1,000票の選挙区が3つ、1,001票から1,500票の選挙区が5つとなっています。

都議会議員選挙では、選挙区ごとに当選する人数が異なるため、投票者数も異なります。投票者数が少ない選挙区でも投票者の合計は7万人を超えていますし、接戦だった選挙区で最も投票者数が多いところでは、20万人以上投票しているところもあります。

投票者の1%にも満たない差で選挙結果が変わっている」ことを確認すると、自分の一票も、また、友人に呼び掛けて一緒に投票に行く一票も、思っていたよりも結果に影響してきそうな気がしませんか。

東京都は人口も、経済規模も世界の国々と比べても大きなポテンシャルをもっています。「都民経済年報」によると東京都の名目GDPは107兆円(2018年)でしたが、国連の統計を基に各国の名目GDP(2018年)と比べてみると、214の国や地域の中で17番目に大きな経済規模になります。これはオランダ(9,140億円)よりも大きい規模となっています。東京都がある分野で世界の国々をリードする。東京都の規模を考えてみたら、そんな可能性だって十分に考えられます。

東京オリンピック・パラリンピックについても、各政党、各候補者が様々な提言を行っているように、経済政策や新型コロナウイルス対策、医療、子育てなども、目標だけでなく、その実現方法や実現までの工程・時期にも注目すると違いが生じてきます。来年や再来年、と時期を決めて比較をしてみると、選挙の結果によって、私たちの暮らしが具体的に変わっている可能性が十分にあります。

オリンピック・パラリンピックや新型コロナウイルス感染症は私たちの暮らしに何十年に一度という大きな変化をもたらそうとしています。そのような時だからこそ、今後、他のどの世代の方よりも長く東京都とのかかわりをもつことになる若者世代が、それっぽい間違った「思い込み」に惑わされずに、「投票」という権利を行使できるようになることを願っています。

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