宮永篤史の駄菓子屋探訪2群馬県太田市「あすなろ」常連さんが「ただいま」と言って入ってくる店

全国約400軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は群馬県太田市「あすなろ」です。

群馬県南東部の個性的なお店

インターネットで駄菓子屋の情報を収集していたところ、群馬県の南東部に個性的なお店がいくつもあることを発見。館林市、太田市、伊勢崎市を周遊してみることにしました。上毛かるたに出てくる「つる舞う形の群馬県」で言うところの、鶴の頭から首にかけての地域です。

東武線・太田駅の南口から西へ600mほど。宮前公園の西側に目当てのお店がありました。緑色のテントの下に、「あすなろ」と書かれた看板がかかっています。この日は車で訪ねたため、挨拶もそこそこに近くに駐車場がないか店主に尋ねると、自宅の敷地に停めてください、とのこと。この一帯は駐車監視員活動の重点地域で、ちょっとでも車から離れると監視員がやってきて、駐車違反となってしまうそうです。店主いわく、「厳しいわよ、荷物の積み下ろしで自分の家の前に停めてても容赦してくれない(笑)」。

「もんじ焼」の食べられる駄菓子屋

駄菓子の数は少なめながらも、駄菓子があればそこは駄菓子屋。店内には鉄板付きの小さなテーブルが2つあり、焼そばや「もんじ焼」などを注文できます。「もんじ焼」は北関東で使われる呼び名で、いわゆる「もんじゃ焼き」のこと。あすなろでは持ち帰りもできるようです。一般的なもんじゃ焼きはドロドロの形状なので、「あれを持ち帰るって、どういうことだろう・・・」と気になり、とりあえず店内で食べてみることにしました。

出てきたのは、想像していたよりも液体感がなく、お好み焼きに寄った感じのもの。イカや玉子が入っていて、ソースの旨味が強く、とてもおいしい!同じ料理名でもところ変わればずいぶん違うものだなと、駄菓子屋探訪の奥行きを感じました。オリヅルという栃木のご当地ソースを使っており、「このメーカーがやめちゃったら、味が作れなくなっちゃうので、うちも廃業。それぐらい重要なの!」とのこと。

使い込まれた鉄板はアーチ状に変形

あすなろは昭和55年(1980年)ごろに、郷土食・焼きまんじゅうのお店として創業。その後、自身の子育てをしつつ、子ども相手の商売がしたいと考え、現在の業態に変更したそうです。店名は、成長していく少年が描かれた井上靖の小説『あすなろ物語』から。

「子どもと関わるのが好きなので、こういう商売が向いてたんだなと思います。常連さんばっかりなので、みんな『ただいま』と言って入ってくる店です。夏の暑さは館林が有名だけど、太田も暑いので、そういう時期に鉄板に火を入れると、店が地獄みたいな暑さになっちゃう。だから夏場は私が調理場で作って出しています。子どもはじっとしていられないから、待ってる間はみんな公園に遊びに行っちゃうんですよ。なので、『おーい、○○くーん!できたよー!』って大声で呼び出しています(笑)」

店主の信澤さんは朗らかで話題も豊富。永久に話し込んでしまいそうで、「常連さんばかりの店」というのも納得の人柄です。そして、たくさんの人々が利用してきたことは、使い込まれてアーチ状に変形した鉄板が物語っていました。最大サイズの焼そばともんじ焼をテイクアウトしましたが、家に帰って重さを量ると、どちらも600g以上!駄菓子と、安くて盛りの良い鉄板料理と、面白い店主と、遊べる広い公園がそろう、あすなろ。必ず再訪したい、なんとも満足度の高い駄菓子屋に出会うことができました。

あすなろ

住所:群馬県太田市浜町15-46

電話:0276-45-1190

営業時間:12:00〜18:00

定休日:不定休

[All photos by Atsushi Miyanaga]

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