楽天「3年越しの恋人」炭谷獲得の狙いは涌井、岸、田中将の再生か

楽天移籍が発表された炭谷銀仁朗

4日、巨人・炭谷銀仁朗捕手(33)の楽天への金銭トレードがまとまり、両球団から発表された。

炭谷は球団を通じ「ジャイアンツのユニホームを着てみんなと戦えたこと、首脳陣の皆さんに指導してもらったことは私にとって宝物です。今まで温かい声援を送っていただいたファンの皆さんにも感謝しています。ジャイアンツで培ったことを生かして、日本シリーズでジャイアンツと戦えるよう頑張ります」とコメントを出した。

2018年オフに西武からFA宣言をし「ポジション争いをさせてもらえる環境」を求めて巨人へ移籍。ちょうど今季までの3年契約を結んだ炭谷だったが、その裏では今回話のあった楽天から熱烈オファーを受けていた事実もあった。

当時、本人は巨人以外のオファーについて「まあ、ノーコメントで…」と言葉を濁していたが、石井GMから強い獲得要請を受けていたことは否定せず、また公私にわたって信頼関係を築いていた渡辺直人打撃コーチ(当時は選手)ら現場からの引きもあった。

ただ当時、炭谷が楽天に移籍していれば同じパ・リーグのライバル球団に補強の目玉として移籍が決まっていたリーグ打点王・浅村と合わせたダブル移籍が発生する状況があった。

10年ぶりのリーグ制覇に歓喜した西武ファンにとって、あのオフは菊池のメジャーへのポスティング移籍を含め優勝に貢献した主力3人が同時流出するという天国から地獄に突き落とされるような悪夢のオフだった。

もちろん、炭谷は原監督からの熱烈オファーを意気に感じ巨人移籍を選択したのだが、一方では、ひそかに受けていた楽天からのオファーを受ければ優勝チームから最下位チームへ主力2人が移ることで受けるファンの失望は計り知れない。その最悪だけは回避できたという思いもあったのだろう。

いずれにしても、ここに来て失速気味の楽天にとっては、主戦捕手・太田の経験不足からくる不振で経験値のある捕手補強が急務となっていた。3年越しの恋人・炭谷を首位・オリックスを追う逆転Vの使者として獲得できたことは今後への起爆剤となりうる。

西武時代から気心の知れた涌井、岸のベテラン2投手はもちろん、登板11試合中、8試合でクオリティー・スタートをマークしながら3勝5敗と勝ち運に恵まれない田中将にとっても、状況を好転させられる経験と引き出しを持つ炭谷の加入は心強く、今できる最善策の補強といえる。

何より、選手個々の特徴と性格までを知り尽くし、ただでさえ対楽天戦1勝7敗2分けと分の悪い古巣・西武にとっては想定される最悪のジョーカーがライバル球団に加入したことになる。

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