初防衛

 〈野球のピッチャーに例えると、150キロだった球速が160キロを超え、コントロールが抜群のうえ球種も多彩になって…〉〈他の棋士が計算力を駆使して概数で数字を割り出しているのに、一人だけ小数点第2位まで見えている感じ〉▲タイトルは防衛して一人前という言葉があります、結果が出せてよかった-。そんなふうに喜びを語った。将棋の棋聖戦5番勝負を3連勝で制し、初防衛を飾った藤井聡太二冠▲相手の渡辺明三冠はこれまで一度もタイトル戦の番勝負でストレート負けを喫したことがなかった。そんな難敵のリターンマッチを退け、通算のタイトル獲得3期で最高段位の九段に昇格。これまでの最年少記録を一気に3歳若く塗り替えた▲冒頭に引いたのは、最近の書籍や雑誌で目にしたトップ棋士たちの藤井評だ。どう話したらこの強さをうまく言語化できるか、分かってもらえるか-と試みる棋士たちの姿勢をとても魅力的に感じる▲平たく言えば、相手は“商売敵”でもある。〈彼にはお手上げ〉と強さを認め、率直に言葉にすることが勝負の世界でプラスにばかり働くとは思えない。それでも彼らは藤井将棋への称賛を惜しまず▲藤井さんは19日が19歳の誕生日。この夏も楽しみな大勝負が続く。昨日の会見では「初心」を強調していた。(智)

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