西武・平良 プロ野球記録39試合連続無失点に感じた「天の力」

開幕からの連続無失点記録を継続中の平良

【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】1日のソフトバンク―西武(ペイペイ)で西武・平良海馬投手(21)が39試合連続無失点でプロ野球記録を更新。タイ記録から新記録へ挑む姿を見守る存在に、僕は気づいていた。

「結構、危なかった」と本人が振り返ったように、無風ではなかった。1点リードの9回に登板。一死から柳田、中村晃に連打を浴びた。それでも、相手の走塁ミスもありピンチ拡大とはならなかった。

一死二、三塁となるところが、二死二塁からリスタート。最後は栗原を左邪飛に打ち取った。運も味方につけた新記録達成の陰に、見えない何かを感じずにはいられなかった。

4年前、2017年6月25日だった。現職の投手コーチだった森慎二さんが、福岡での試合前に体調を崩し入院。そのまま回復せず、わずか3日後に42歳の若さで急逝した。西武の元守護神でありセットアッパー。森さんが後輩の平良を見守っていたと個人的に思っている。

平良が38試合連続無失点でタイ記録に並んだのは、森さんの命日の6月28日だった。京セラドームで行われたソフトバンク戦。通常、月曜日に試合は行われないことが多いが、大阪→北九州→博多と続く変則日程で偶然も重なった。

黒田哲史内野守備走塁コーチは現役時代から森さんとは親友で同い年。現在でも、当時のLINEアカウントに喜びや、時には弱音も含めた本音のメッセージを送り続けている。今回も平良の偉業を、天国へ向けて報告したに違いない。

現役時代の森さんは一風、変わり者だった。189センチの大男にもかかわらず小型車のローバー・ミニに体を折り曲げて乗車。当時の球団幹部から「万一に備えて頑丈な車に乗り換えなさい」と忠告されたこともあった。西武ドームの駐車場をキックボードで走り回り、警備員を困らせたこともあった。

「僕らの仕事って人を楽しませることじゃないですか。方向性はどうあれ、僕は誰もがやれないことをやりたいんです」。05年オフにはポスティングでメジャー挑戦も果たした。右肩の故障で登板はならなかったが、チャレンジを続けた。

森さんの死後、17年ドラフトで平良は入団した。直接指導は当然ないだろう。だが、そんなことはどうでもいい。西武の仲間を愛していた森さんは、今でも空からヤングレオを見守っている。そう思っている人は僕だけではないはずだ。

☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。

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