エンゼルス広報のグレース・マクナミーさん ドジャース広報時代に気づいたこととは… 

エンゼルスの広報マネージャー、グレース・マクナミーさん-(本人提供写真)

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信=エンゼルス広報のグレース・マクナミーさん(2)】「ファンとして野球場に来ると、自分と球場にいる選手しか見えないじゃないですか。小さいころ、家族でよくドジャースの球場に行ったんですけども、私の目に映っていたのは、野球選手とファンとチケットをとってくれる人とアイスクリームを売ってくれる人のみ(笑い)。でも、球団に入って、私が野球観戦するのにこんなにたくさんの人が裏で支えていたんだなということに初めて気がついて、すごく感動しました」

野茂英雄さんがドジャースに在籍した4年間、広報部で日本の報道陣を支え続け、20年の時を経て再び大谷翔平投手の加入したエンゼルスの広報として2018年に現場に戻ってきたグレース・マクナミーさん。当時、一野球ファンだった大学生から、ドジャース広報部員として日本に届けられる野茂フィーバーニュースの一端を担った彼女だが、初年度はインターンとして広報以外の仕事もこなしていた。

「今でこそチケットは電子スキャンしますけど、以前はチケットを(入り口で)破って、半券をくれたじゃないですか。研修生は7回くらいになると3人で分かれてスタジアムのチケットテーカーを回り数字をチェックするんです。最終的には、昨日の数字と今日の数字が書かれた紙から観客数が分かるのでそれを数えるんです」

「手動で数えていたのか!」とやや衝撃を受けたが、思えば駅の切符を駅員さんがパンチで穴を開けていた時代。誰かが数える必要がある。

ただ、約60年前に建てられたドジャー・スタジアムは丘の上にあり、景色こそロサンゼルス有数だが、造りは実に不便なのだ。縦長構造で9階建て。古いエレベーターを20分以上待たされ悪態をついたことは数知れず、クラブハウス間の移動で走らなければ取材に間に合わなかったり…。

「アハハ。足は鍛えられましたね」と、グレースさんは涼しそうに笑い「数えに行く中で、いろんな人と会えるんです。セキュリティーの人、チケットの人、売店の人。そういう裏方の仕事の方たちに出会って、覚えてもらい、会話をしながらさらに知り合うことができてって。それがすごく楽しかった。野球って、選手だけじゃなくて、大勢の人が裏方で支えているんですよね」と語ってくれた。球団職員でない私でさえも、スタジアムで会う大勢の笑顔とたわない会話に何度も助けられているからよく分かる。

しかし、そんな場所をグレースさんは4年で去る決断をする。

「自分の力を他の業界で試してみたいっていう気持ちはもともとあったんですけども、やはり野茂さんがいる間はドジャースに残って皆さんのお世話もしたかった。野茂さんがトレードに出た時に、そのころのGM、フレッド・クレアさんのオフィスに呼ばれたんですね。『ヒデオはトレードに出てしまったけども、我々としてはグレースのことをすごく気に入っているし、このまま残ってほしい』と、GMご自身からそういう言葉をいただいて、私自身はすごく感動しちゃったんですよね。すごくうれしかったんですけども、ちょうどその年にドジャースが売却され、オーナーも代わったんですね。オマリー会長からFOX社に。そこで、今後どんどん変わっていくのかな、自分も変わっていかないといけないのかなって」

悩んだ末、アニメ映画の世界へ飛び込んだ。=続く=

☆グレース・マクナミー 48歳。エンゼルスの広報マネジャー。ロサンゼルス生まれの日系アメリカ人で、1995年から野茂が移籍する99年までドジャース広報部に在籍。その後ゲーム会社などの広報を経て、大谷のエンゼルス加入で2018年、約20年ぶりに野球界復帰。

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