2021年上半期(1-6月)「飲食業の倒産動向」調査

 2021年上半期(1-6月)の飲食業倒産(負債1,000万円以上)は330件(前年同期比21.0%減)だった。2020年同期は、人手不足や1度目の緊急事態宣言で418件と高水準だったが、コロナ禍の各種支援で飲食業の倒産は大幅に抑制された。上半期ベースでは、前年同期を下回ったのは3期ぶり。
 ただ、飲食業倒産のうち、新型コロナ関連倒産は145件(構成比43.9%)発生し、コロナ禍の長期化が経営に深刻な影響を与えている。
 特に、「酒場・ビヤホール(居酒屋)」の倒産は79件(前年同期比7.0%減)と減少したが、新型コロナ関連倒産は47件と約6割(構成比59.4%)を占めた。3度目の緊急事態宣言は6月20日、沖縄を除く9都道府県で解除された。東京や大阪、北海道などはまん延防止等重点措置へ移行し、条件付きで酒類の提供は可能となったが、20時までの時短営業が続く。居酒屋では、酒類提供の制限は来店客の減少や客単価の下落に直結するだけに、依然として厳しい状況に変わりはない。
 資本金別では「1千万円未満」が288件(構成比87.2%)、負債額別では「1億円未満」が288件(同87.2%)と、小・零細規模の倒産が大半を占めている。
 コロナ関連支援で倒産は前年同期を下回ったが、時短や休業要請への協力金は遅れている。体力のない小・零細企業のなかには営業再開が困難な企業もあるとみられ、今後の飲食業倒産の動向が注目される。

  • ※本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2021年上半期(1-6月)の倒産を集計、分析した。

資金繰り支援で倒産の抑制続く

 2021年上半期(1-6月)の「飲食業」倒産は330件(前年同期比21.0%減)だった。国や自治体、金融機関などによる資金繰り支援が奏功し、2007年同期以降の15年間では2015年同期(312件)に次ぐ、2番目の低水準にとどまった。
 ただ、飲食業の新型コロナ関連倒産の構成比は、2020年12月以降、7カ月連続で3割を超えた。コロナ禍の長期化に伴い、新型コロナ感染拡大の直撃で経営が悪化した企業の脱落が目立ってきている。
 飲食業に対する協力金などは一定の効果を発揮しているが、飲食業の多くを占める小・零細企業は手元資金に乏しい企業が多い。協力金などの支給遅れやコロナ禍の収束時期次第では、息切れや先行きへの諦めから倒産が増勢に転じる可能性が高まっている。

飲食業

業種別 居酒屋の新型コロナ関連倒産、約6割

 業種別では、日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」の91件(前年同期比17.2%減)が最多。次いで、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」79件(同7.0%減)、「食堂,レストラン」52件(同49.5%減)の順。
 新型コロナ関連倒産が占める構成比では、「そば・うどん店」60.0%(新型コロナ関連倒産3件)、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」59.4%(同47件)、「持ち帰り飲食サービス業」50.0%(同4件)の3業種で5割以上だった。
 コロナ禍でのテレワークや外出自粛、酒類提供の停止などが、飲食業の業績悪化に大きな影響を与えている。

飲食業

資本金別 「1千万円未満」の小・零細企業が約9割

 資本金別では、個人企業を含む「1千万円未満」は288件(前年同期比22.7%減)。飲食業倒産に占める構成比は約9割(87.2%)を占めた。一方、「1億円以上」は2020年同期以降、2年連続で発生していない。
 負債額別では、「1億円未満」が288件(前年同期比23.8%減)で、構成比は約9割(87.2%)を占めた。
 資本金・負債額ともに、小・零細規模の倒産が主体となっている。

都道府県別 増加19、減少20、同数8

 都道府県別では、増加が19府県、減少が20都道府県、同数が8県。
 緊急事態宣言が継続している沖縄県では3件(前年同期比200.0%増)だった。
 まん延防止等重点措置が発令されている地域では、増加が京都11件(同22.2%増)、福岡19件(同11.7%増)、埼玉10件(同11.1%増)、兵庫26件(同4.0%増)。
 一方、減少は愛知19件(同54.7%減)、北海道9件(同40.0%減)、神奈川13件(同27.7%減)、大阪57件(同25.9%減)、東京47件(同25.3%減)。
 千葉は前年同期同数(7件)だった。

© 株式会社東京商工リサーチ